漢字の世界を広げる学び方
~低学年からスタート~

1/20号日本教育新聞企画特集記事では、大阪府・高槻市立大冠小学校を取材させていただきました。
大冠小学校では、「漢字の世界を広げる学び方」を漢字指導に取り組まれていらっしゃって、『漢字のとびら』を3年前からご使用いただいております。
関美和子先生にお話を聞かせていただきました。

高槻市立大冠小学校

日本教育新聞「企画特集」と併せてご覧ください。
日本教育新聞「企画特集」2020年1月20日PDF

言葉として漢字を覚える

記者:『漢字のとびら』をお知りになったのは、どのようなことがきっかけですか。

関先生: 学校にいただいたサンプルを見ました。今までの漢字ドリルは、漢字を書くだけの作業になっていて、たくさんの漢字の練習をした後に、少しのテストのページがあっただけで、漢字学習が終わっていました。このような学習方法では、「とめ」「はね」「はらい」や「書き順」など正しく漢字を覚える力は、つきにくかったです。また、保護者からは、子どもたちが漢字を正しい書き順で書けているかと心配する声もありました。特に、高学年では漢字だけを学習する時間が取れない中で、子どもたち自身で間違えやすいポイントを確かめられたり、「自ら学べる漢字の学習ができるものがあったらいいのに」と思っていました。そんなときに『漢字のとびら』と出会い、考えて漢字学習ができるところがよいと思い選ばせていただきました。

― 実際に『漢字のとびら』で学習させてみて、他の漢字ドリルとは違いましたか。

関先生: 違いますね。いくつかの単元をまとめた『力だめし』のコーナーで漢字学習を振り返るタイミングがあって、子どもたちがもう一度確認できる場面があることは、「すごくいいな」と思いました。似ている漢字の間違い探しは、大人でも「これ、どこが違うのかな」って思ってしまうような問題もあって、いい加減に漢字の勉強をしていたら正しく答えられないこともありますし。

― 今日の授業のように漢字の書き順を学習して、漢字かくれんぼ(※1)を子どもたちに出題するという学習方法を、以前からなさっていたのですか。

関先生: この漢字指導は、今年の1年生の授業から取り入れました。低学年の漢字指導のときに、この流れで学習させるようにしています。新しく学習する漢字をぱっと見て覚えられる子もいれば、お話っぽくしないと覚えられない子もいます。他にも似ている文字と関連付けて覚える子もいます。子どもによって覚え方が違いますからね。子どもそれぞれに対応できるように、いろいろパターンを工夫しています。今までの漢字ドリルでは書き取りをさせるばかりで、漢字を覚える方法としては実用的ではないと感じていました。実際に新しい漢字を言葉として使えない子が多かったです。そのために、新しく学習する漢字を含む言葉を子どもたちに考えさせて、発言させる「言葉集め(※2)」という学習方法を取り入れています。ノートに新しく出てきた漢字を含む言葉を書きためるようにしています。

― 1年生が持っている漢字ノートは、その日に学習した漢字練習を繰り返し書かせるためではなく、「言葉集め」用のノートなのですね。授業中には「九」の漢字を学習したときに「キュウリ」と答えた子どももいましたが・・・。

関先生: そういう答えには「おしい」の欄を別に作って、子どもの発言に寄り添い正しい言語を書いています。漢字の「八」を学習しているときに、「ハロウィーン」と発言した子や、「小」の漢字を学習したときも、「しょう油」と答えた子どももいました(笑)。1年生は文字を音で覚えているので、「ひらがな」や「カタカナ」と「漢字」の書き表しのちがいが、まだ分からない子どもがいます。文字を音で覚えてしまい、間違ったまま覚えていくよりも、正しい漢字で書くことを指導して、「この言葉はカタカナで表すものだよ」と示してあげると子どもたちは正しく覚えられます。「ひらがな」「カタカナ」「漢字」を正しく使い分けるということができていない子どもたちも、正しく言葉を覚えられるように整理してあげることが大事だと思います。「この漢字はこうやって書くよ」と子どもたちに示してあげます。すると正しい漢字を覚えた子どもは、学習が進んで新しい漢字を習ったときにも「この漢字習ったことあるよ!」と連続して新しい漢字を覚えていくようになっていけると思います。
※1その日に学習する漢字の中に別の文字を探すクイズ。例:「九」の中にカタカナの「ノ」が入っているなど
※2学習中の漢字が使用される言葉を子どもたちが発言する。「九」の漢字を学習した時に、「九がつ九か」「九だん」「九ねん」など子どもたちが発言したものを、先生が黒板に書く。子どもたちはそれを漢字ノートに書き、語彙を増やしていく。

漢字の間違いを減らす工夫

記者:他に『漢字のとびら』で先生が使いやすいと思われることはありますか。

関先生 : 新しく習う漢字の書き練習で、漢字の部首に「あみかけ」がされていますよね。子どもたちがバランスのとれた、きれいな漢字を書くために効果的だと思います。例えば、「ごんべん」はどれぐらい練習するマスの左側に寄せたらいいのかなど、視覚的にとらえることができるので、子どもたちにはとても書きやすいですね。また、他の「ごんべん」の部首の漢字を新しく習ったときに「今までにも『ごんべん』が部首の漢字があったよね」と子どもたちに聞くようにしています。学年が上がったときには特にそうします。すると正しい漢字のバランスや今までの漢字の復習にもなります。

― 漢字の宿題は与えていますか。

関先生: 中・高学年の子どもたちには、『漢字のとびら』から出題しています。『書き名人』や『送りがな名人』のコーナーなどを宿題として出すようにしています。しかし、1年生には、中・高学年のような指示を与えるだけではまだ難しいので、その日に「言葉集め」で出た言葉を漢字ノートに書かせています。

― 子どもたちの漢字の書き間違いは減りましたか。

関先生: 間違えやすい漢字のミスが減ってきました。例えば、1年生で習う漢字で、棒が出るか出ないかという部分などの間違えやすい漢字が正しく書けています。他の学年でも、子どもたちが間違えそうな漢字を『漢字のとびら』では予め示しているので、正確な漢字を書けるようになりました。

漢字指導にも主体的な学びを

記者:漢字学習の時間で取り組んでいることはありますか。

関先生: 子どもたちが漢字を覚えてきたら、国語の係の子どもたちが他の子どもたちに漢字クイズを出しています。

― 先ほどの授業中に見受けられましたが、子どもが子どもを指名して、漢字を読ませていました。他の学校ではあまり見たことがありませんでした。いつ頃から子どもたちどうしでの指名をさせているのですか。

関先生: 他者指名は、夏休み明けぐらいから子どもたちにさせています。国語では、「ひらがな」の学習のときからやっています。文字の指導は、教員からの一方的な指導になってしまうので、子どもたちが自分たちで理解を深めるためにできる工夫をしています。低学年の子どもたちができることの一例として、漢字の読み方など答えが決まっている問題で他者指名をします。授業の中で子どもたちができることは、子どもたちに任せるようにしています。

― 『漢字のとびら』を他の先生にお薦めするとしたら、どのようなポイントがありますか。

関先生: 高学年になると、漢字の学習に割く時間が少なくなってしまいます。子どもたちに対して「やっておきなさい」「何回書きなさい」という指示だけになってしまいます。授業で取り扱う時間が十分に取れないならば、漢字の学習においても、子どもたち自身が考えて取り組めるほうがいいと思いました。これまでの教材は、答え合わせをした時に初めて間違いに気づくことができるのですが、『漢字のとびら』には子どもたちが自分で予め間違いに気づける工夫があります。漢字学習でも「主体的な学び」を実践するために『漢字のとびら』がいいですね。

― 貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました。

School Data

高槻市立大冠小学校

大阪府高槻市天川町
42番1号
児童数:336名
学校長:福澤隆治先生

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