「学びに向かう力」を引き出す漢字学習

1/24号日本教育新聞企画特集記事では、兵庫県・西脇市立桜丘小学校を取材させていただきました。
桜丘小学校では、『漢字のとびら(光村図書準拠版)』を今年度から全学年でご使用いただいております。前田正樹校長先生、5年生担任の藤原嵩史教諭にお話を聞かせていただきました。

西脇市立桜丘小学校

日本教育新聞「企画特集」と併せてご覧ください。
日本教育新聞「企画特集」2022年1月24日PDF

『漢字のとびら』導入のきっかけ

記者:『漢字のとびら』の導入経緯についてお聞きします。

前田校長先生: 『漢字のとびら』の著者である白石範孝先生とは以前から懇意にさせていただいております。白石先生に本校へお越しいただき、読解の授業をしていただきました。理論立てた説明で、子どもたちの理解が段階を追いながら深めていく授業は大変参考になりました。その後、『漢字のとびら』の見本を取り寄せました。『漢字のとびら』は漢字学習において「考えながら学習する」「漢字学習を単調な作業にさせない」点で興味が湧きました。そして各学年担任に見せて、全担任が納得した上で使うことになりました。

考えて学ぶ漢字学習

(左)藤原嵩史教諭(右)前田正樹校長先生

(左)藤原嵩史教諭 (右)前田正樹校長先生

記者:今までの漢字ドリルと『漢字のとびら』と比べてどんな違いがありましたか?

藤原教諭: 昨年の2学期に子どもたちに漢字学習についてのアンケートを取ったところ、子どもたちは「漢字の勉強は頭を使うところがない。だから漢字は好きではない、面白くない」と書いてました。しかし、今年『漢字のとびら』を使い始めて、『漢字のとびら』にある「書き順のルール」を含む知識事項など漢字学習を通して日本語の面白さを子どもたちが感じて興味関心を持つようになりました。

前田校長先生: 子どもたちは『漢字のとびら』で今までの漢字ドリルでは学べないことを自分たちは学習しているという「特別感」を持っていると思います。

記者:漢字への興味関心により学習意欲が向上したのですね。本日の授業にあった「圧」という字の部首は意味から考えさせた場面がありましたね。

「減」と「圧」の書き順を比較

「減」と「圧」の書き順を比較

藤原教諭: ある子どもが「圧」という漢字には「強いイメージ」があると発言していました。「土」を上から押しつぶす⇒土に関係しているから「土」が部首であるとという考えを導き出しました。
また、今日の授業で学習した「圧」と以前に学習した「減」の字で、書き順が「横が先」か、「はらいが先」かで子どもたちが悩んでいました。『漢字のとびら』には、「書き順のきまり」のページがあります。実は「減」を学んだ時にも書き順のルールに触れていました。「書き順のきまり」はルールの確認ができるページなので、わからないときはルールに立ち返ることで、パターンに当てはめることができます。
さらに、他の漢字にもそのルールが当てはまるのではとグループワークで子どもたちに考えさせました。その結果、「圧」と同じ「横が先」の漢字に「原」「厚」「反」/「減」と同じ「はらいが先」の漢字に「感」「成」「皮」「波」があるとわかりました。横画を貫く線があるかないかで書き順が違うことに子どもたちは気づきました。この発見が学びにつながるのです。
意味やルールを考えて、他の物事とも関連付けて覚えることは、子どもたちの理解・定着に大きな影響があると思います。 授業の最後に種明かしで「『漢字のとびら』に「はらいが先」か「横が先」か載っているページがあるよ」と子どもたちに教えたら驚いていました。仮に私が子どもに「圧」は「横が先」だとただ教えるだけでは、定着しないで終わってしまうかもしれません。

『漢字のとびら』の「減」の書き順について
『漢字のとびら』の「圧」の書き順について

『漢字のとびら』の「減」と「圧」の書き順について

自発的な疑問を持つ習慣

記者:子どもたちから非常に多くの質問が自発的にでていましたが、『漢字のとびら』を使いはじめてから見られる変化なのでしょうか?

藤原教諭: そうですね。書き順のルールや語幹と送り仮名、とめ・はね・はらいについてなど注意して学ばせていくうちに、子どもたちから自発的に質問が出るようになりました。中には、授業中に子どもたちからの質問で私が答えることができなかったものがあったので、子どもが味をしめたのか色々な質問をするようになりましたね。
子どもたちからの質問にはその場で答えることもありますし、子どもたちに調べさせることもあります。子どもたちは、漢字辞典を引くこともありますし、インターネットで調べることもあります。一つの情報だけでなく、いろいろな方法で情報を集め、調べて本当にその情報は合っているのかクリティカルな視点で考えるようになったのも子どもたちの成長だと思います。

前田校長先生: 子どもたちが「なぜだろう」と疑問に思うことが、漢字学習に留まらず、国語の文章読解にも、算数にも、他の科目にも波及しています。藤原先生が出張で不在中に私が社会の授業を代わりに担当した時に、子どもたちはたくさん質問し、答えを子どもたち自身で調べるということをしていました。普段から疑問を持つということが習慣になっているからこその子どもたちの反応でしたね。

記者:子どもたちの「自発的な疑問」と「解決に向かう姿勢」が素晴らしいです。今後の成長が楽しみですね。本日は「考えて学ばせる漢字学習」の新しい取り組みについてお話を聞かせていただきありがとうございました。

以上

School Data

西脇市立桜丘小学校

兵庫県西脇市黒田庄町石原1470
児童数:89名
学校長:前田正樹先生

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