語彙力を高め、漢字への興味も喚起

本日は「漢字のとびら」を全学年で使用して2年目の札幌市立幌北小学校で学校長佐藤圭一先生、3年生担任の井原真美先生、中村美玖先生に「漢字のとびら」を使用しての効果と取り組みにつきましてお話を伺いました。

札幌市立幌北小学校

日本教育新聞(2月21日号)7面に掲載されました。


記者:「漢字のとびら」を導入された経緯を教えてください。

井原先生: まず、通常授業や朝活動の15分間、モジュールでの限られた時間内に、漢字への取り組みをしっかりと行いたいという思いがありました。これまで使用していたA4版の漢字ドリルでは、漢字ひと文字の練習マスが多く練習するのに時間が掛かり、時間内に終わらないことが課題になっておりました。「漢字のとびら」は判型もB5と小さく、練習マスも限られており、学ぶべきポイントもしっかと示されていて学習がしやすいと思ったからです。余計な情報も少なく、漢字そのものに特化してシンプルな作りも良い印象を持ちました。また、よくある書き取り練習だけの教材とは異なり、書き順が問題になっていたり、○×クイズのような知識を問う問題があったりと練習だけのこれまでのドリルとは異なり、問題にバリエーションがあったのも新鮮でしたので、先生方と話し合って採択することに決めました。

佐藤校長: 私は今年度赴任して参りましたので、導入当時の詳しい話は分からないのですが、継続して使用している理由の補足を致します。本校の子どもたちの実態からお話し致しますと、国語の言葉の特徴や使い方に関する事項における漢字学習を含めた“言葉”の領域が、他の領域に比較してやや定着しづらい傾向が見られました。全国学力・学習状況調査(以下学テ)の結果と当校を見てみると非常に似ている傾向があり、漢字の正答率を見ても普段から子どもたちの身近にある言葉は、漢字として定着し書けているのですが、子どもたちにとって身近に感じにくい漢字の正答率は低くなっていました。平成25年度(学テの漢字の)書き取りの平均正答率は、「焼く」が72.6%で、「停車」が47.1%という結果でした。申し上げたいのは、漢字を学習する段階で子どもたちの身近に感じられない言葉の使い方が沢山ありますので、先生方には補完して伝えて下さいとお願いしていて、同じ漢字を何度も数多く書かせるドリルより、漢字のとびらの学習方法が本校の実態には合っているのではないかと思っています。

記者:漢字学習は日ごろどのようにされているのですか。

井原先生: 学年によって異なりますが、3・4年生は週一回の朝学習15分程度と授業中で新出漢字が紹介されている練習ページに取り組んでいます。漢字の学習は授業単元に関係なく一日2~3の新出漢字を学ぶようにして、進めるだけ進み先取りして学習しております。3・4年生の学習漢字は学ぶ字数も多くありますので、授業で扱う該当だけではなく、漢字は先に進むことに、大きな問題はないと思っています。

佐藤校長: 高学年では5~6つ(1ページ分)の漢字を学習しているようですね。練習ページが量的にも少ないので次ページにある練習を合わせて取り組んでいるようです。書き取りと練習がセットになっていて学習がしやすいのだということでした。3、4年生に比べるとスピードも速いようです。

記者:「漢字のとびら」を導入してみて、子どもたちの変容があれば教えてください。

中村先生 : 大きな気付きは二つあります。一つは「間違い探し(書き名人)」ですね。子どもたちが陥りやすい間違いに着目して、先回りして間違いに気付かせるように工夫がされています。これは他の漢字ドリルにはない特徴で、子どもたちも間違わずにしっかりと学習が出来ていると思います。もう一つはDL(ダウンロード)して使用する確認テストです。私たちの学年ではDLしたテスト宿題として活用していて、翌週に同じテストを使用して子どもたちの定着をはかっているのですが、このテストには普段は子どもたちが使わないような言葉も使われていたりして、語彙力を広げられることや教科書とは違った漢字の読み方に触れられ、工夫が感じられて効果が見られています。授業中に漢字の音訓の読み方を勉強していた時に、読み方が分からないという子どもは少なかったです。漢字の色々な使い方や読み方が身についているのだとも感じました。

佐藤校長: 札幌市では「学ぶ力育成プログラム」を掲げていて、もちろん本校でも行っており、プログラムの中には、国語の課題として、「語彙力」に学力差がみられることをあげています。これを解消するのにも「漢字のとびら」が少なからず寄与しているのではないかと中村先生の話からも感じています。

記者:これまで漢字の定着には練習回数が大切だと思われていて、「漢字のとびら」は3回分の練習回数ですが、不安はありませんでしたか。

中村先生:以前の学校では短冊形のドリルを使用し漢字の書き取りノートを使用させて、一つの漢字を10回書くことを子どもにさせていたのですが、嫌がるし、字が雑になるし、間違えたままの漢字を書いて覚えてしまうということがありました。そんなことからも沢山書いて覚える学習方法に疑問を感じていて「漢字のとびら」を使って子どもたちに学習させる時に、「沢山書かなくても、集中して3回書いたら覚えられるよ!」と自信を持って子どもたちに伝えました。少ない回数ですが丁寧に集中して学習させることで、子どもたちの負担感がなくなりました。また、マス目についた色や注意すべきポイントが示されていて、効率的に学習が出来るようになったと思います。

記者:「漢字のとびら」を使って子どもたちが変わってきたと感じる場面を他教科でも見受けられたりしますか。

中村先生: 関連しているかどうかは分かりませんが、子どもたちが使用しているタブレット活用の中で、まだ書くことは出来ないけれど、読むことは出来るという場面をしばしば見かけるようになったと思います。また、読むだけではではなく、その未習の漢字をあえて使い物語を考えて文章を書いていたりして、新しい漢字や言葉に興味を持って知識を広げているようです。漢字に対する親しみも出てきているのかも知れません。

記者: 漢字学習は教材を変えたことで変わりましたか。また、今後の課題があれば教えて下さい。

井原先生: 漢字学習のスピードは以前に比較して早くなってきていて、DLして使用する漢字テストも既に終えています。振り返りで間違えが多くみられた漢字や普段使いされない漢字を再度学習する時間を作り、より深い定着を目指しています。定着の遅い子どもには書く回数も大事だとは感じますが、すべての子どもに一律の基準(回数)が必要な訳ではありません。その時間を有効に使って、語彙や知識を広げてもらいたいと思っています。また、練習回数を増やすにしても書くことが嫌にならないよう、「漢字のとびら」を参考にしてクイズのようにして、注意して指導しています。DLできる漢字作文プリントも文書を書くための語彙を広げたり、漢字正しく使うための練習をさせて行きたいと思っています。

佐藤校長: 国語に限って申し上げれば、単純に漢字を正しく書くことだけではなく、意味を大事にしてもらいたいと思います。例えば国語辞典などで子どもたちの語彙を更に広げてもらいたいし、漢字の学習が早く進んでいるならば、付属のプリントなども使い文章を書く機会も増やしてもらい、国語の総合的な力を養ってもらいたいですね。また、子どもたち自身が自分たちで苦手領域に着手できるように先生方にはサポートしてもらいたいです。個別最適な学びにもつながるよう、子どもたち自身が自らの学習に何が足りていないのかに気付き、それらに必要な学習に向かえるように、学習の仕方や量を調整できる、そんな子どもたちに成長して欲しいですね。本校の研究テーマでもあります「学びの自己調整」が漢字の学習や課題でもある語彙力を育てる側面からもできるのではないかと思っています。

記者: 本日は札幌市立幌北小学校で漢字の学習を通じて、井原先生(左)、中村先生(中央)の実践的な取り組み、佐藤校長先生(右)に貴重なお話をお伺いいたしました。お忙しい中、取材にご協力をいただきまして、誠にありがとうございました。

School Data

札幌市立幌北小学校

北海道札幌市北区北
19条西2丁目1-1
児童数:321名
学校長:小畠八重先生

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