公教育のあり方を民間の視点で!

公教育のあり方を民間の視点で!

 今回は、横浜市立つつじが丘小学校の学校長である小正和彦先生にお話をいただきました。小正先生は、横浜市立小学校において初めての民間人校長で、この春で6年目を迎えます。ここにきて、学校のコミュニティスクール化が多くの自治体で進められています。今回のお話では、「コミュニティスクール」の本来あるべき姿について、多くの示唆を提示いただきました。

学校授業のスパイス「公教育のあり方を民間の視点で!」画像1

プロフィール
1962年(昭和37年)生まれ。大学卒業後、1986年より5年間ロンドンにて日本人子弟のための学習塾を運営。帰国後、教育関連会社取締役、国際交流関連NPO理事長を経て、2005年4月横浜市立小学校で初めての民間人校長として、つつじが丘小学校(青葉区)に着任し、6年目を迎えている。横浜市教育委員会よりパイオニアスクールよこはま(PSY)事業に指定された「学校図書館の地域情報センター化事業」を中心に、学校教育への多様な外部リソースの活用を推進するとともに、子ども、保護者の視点に立った、学校教育、放課後、休日を通した学び環境のグランドデザインの策定、実現に向けた取り組みを通して、これからの公立小学校のあり方を提案してきている。

CHAPTER 1学校運営のあり方について

つつじが丘小学校では、学校運営をいくつかの部門に分けて進められておられるとのことですが、そのねらいと仕組みはどのようになっているのでしょうか?

ポイントは2つあります。1つめですが、多くの先生方は、学級なり学年の経営という観点で、まさしく授業や生活指導といった今までの教員としての力を伸ばし、業務にあたることをメインに捉えているかと思います。それはそれでとても重要なことです。と、同時に学校というのはそれだけではなくて、学校という組織として動いていくことが沢山ある中で、自分も直接それに参画していることを感じられる組織体にしたかったのです。そうしたことが実現できるように「運営部」と「専門部」を立ち上げました。「運営部」は、一番のドメインである直接的な教育活動です。学年、学級においての目の前の子どもたちをどう指導するかということを主として活動します。「専門部」の方は、学校は授業を縦軸として、同時にたくさんの横軸の業務が走っていて、それぞれの先生方が業務として責任を持って取り組む内容、カテゴリーで構成しています。

2つ目のポイントですが、平成18年度から神奈川県では総括教諭、横浜市では主幹教諭という新たな職が生まれました。それまでは管理職としての校長と副校長の下に教務主任とか何とか主任というポジションがありました、それは職制として位置付けされているわけではありませんでした。この準管理職としての新たな職制は、現実的にはいろいろ学校で、形骸化しているケースが多く見られます。それは、組織運営上大変勿体ない話で、新しい職制ができた以上、その職がちゃんと機能するための、主幹教諭がミドルリーダーとなるための組織を作る必要性があると考えました。そこで、先ほどお話した「専門部」を構成する「授業改善部」、「外部連携部」、「学校づくり部」をつくり、その部長に主幹教諭を当てました。従来からある、校長がいて、副校長がいて、あとはみんないっしょという、いわゆる「ナベブタ式」といわれている学校運営を組織的に機能できるようにと考えました。その主幹教諭が担当するところの職務を明確化したんですね。

次に、「専門部」にある3つの部の役割です。まず、「授業改善部」では、教育課程、カリキュラムの作成と校内の重点研究を担当します。後に述べますが、本校では、外部リソースの活用を1つの柱としています。それを活用した授業のあり方を重点研究として進めてきました。テーマは「総合的な学習」を中心に行っていて、横浜市でいう「横浜の時間」(総合的な学習の時間に教科・領域を関連付けて行うもの)というものです。これを「授業改善部」が担当しています。そして、「外部連携部」。ここでは、「地域情報センター事業」を一つのテーマとして活動しています。いろいろな地域の方、外部の方とのコラボレーションができあがってきていて、その部分を担当するのが「外部連携部」です。「学校づくり部」ですが、学校では、様々な教育課題に取り組んでおり、児童指導をはじめとして、子どもたちが本当にみんなが楽しく、安全に過ごせる学校であるための「安全防犯教育」、またこれからの社会を育つ子どもたちに必要な「環境教育」「IT活用」などを担当、推進します。

先生方は教科指導と生活指導があります。その中で、そうした活動に係わるということでお仕事が煩雑になるということはありませんか?

これは業務が増えているという訳ではなくて、すでに学校の中で扱っているものなんです。どんな学校でも当然授業がメインですけど、登下校のケアもしなくてはいけないし、施設の安全管理もしなければなりません。一方で、特に小学校の国際比較をした時に、日本の学校教育の質を担保してきたのは校内研究であることは指摘されているところです。教員は、主体的に各教科の授業研究をしていますし、かつ各学校でその学校においてテーマを設定して校内重点研究も進めています。そうしたことにより、他国と比べても日本の小学校の先生のレベルが高い水準に維持できている訳なんです。(各部で進めていることの)ほとんどのものは既に学校の活動の中にあるんですね。外部連携についても、地域との連携は安全面だけでなく、子どもたちの豊かな学習活動を実現する上でも必要なことです。そうしたことを、わかりやすく整理して、一人であっちもこっちもじゃなく、自分の担当は何か、そしてそれが学校全体の中でどのような位置付けかということを明確化したということです。

CHAPTER 2 民間からの視点 ~学校の地域情報センター化~

各々の先生方の役割が明確に分担されているんですね。非常にシステマチックな運営の仕方であるかことが先生のお話で理解できました。
3つの部門の中で、「外部連携部」というのはつつじが丘小学校を大きく特色づけるものになっているかと思います。学校図書館をベースにして地域情報センターという組織を運営されていると聞いています。その考え方および仕組みをお話いただけますか。

本校に来て5年目が終わろうとしていますが(6年目に入ったところですが)、1年目からのテーマとして、外部から私が着任したことで、何が保護者や子どもたちにとってメリットになるかということをいつも考えてきました。今までずっとプロパーとしてやってこられた先生方に比べて、それ以外の世界でいろいろ仕事をしてきています。そうしたことを私の持ち味として学校運営に活かしたいと思いました。一人一人の先生方は、大変優秀ですし、責任感を持ってやっている方が殆どですが、それぞれの先生が持っている力量とか限界が、子どもに対する授業や提供する教育内容の限界になることに非常に抵抗感がありました。たとえば1組、2組、3組ということによっても保護者に『当りだ、外れだ』という評価を受けてしまう。それをどう打開するかという一つの手法としては〔たとえばそれをある程度共通化する時のやり方としては〕「教材」を活用するという考え方もあると思います。それといっしょで、極力いろいろな学校外のリソースを持ち込むことによって、それを活用して教育活動がされれば、1組、2組、3組もほぼ同じように質的な共通性が担保できるだろうというのがもともとの発想でした。

そうした中で、1年目に面白い企画が本市教育委員会で立ち上がったんです。それは何かというと、教員だけではなくて、横浜市役所、主に教育委員会事務局が中心なのですが、市の職員と教員を対象とした若手職員による「問題解決プロジェクト」というものです。確か、1年目は6つのテーマが分かれていました。たとえば、小学校でいうと『給食の残渣を0にするためにはどうすればいいか』というような。その中の一つに『学校図書館の地域情報センター化を考える』というプロジェクトがありました。学校図書館の地域情報センター化というと学校図書館の方にウエイトがあるように思えますが、私たちの解釈というのは逆で、学校図書館の地域情報センター化というのは学校の中に地域情報センターの機能をどこに一番作りやすいかといったら学校図書館だったみたいな順番なんです。地域情報センターというのは、いろいろな情報と同時に、人の行き来、出入りがあるような「場」を学校の中にどうやって作るか、という解釈をしました。本来でしたら、そのプロジェクトは、いろいろな所から職員が集まってくるもので、管理職はメンバーとして想定されていなかったようでしたが、教育委員会に連絡させていただいて、地域情報センターとか学校図書館という以上、手法の問題だけではなく、「場」に関するものだからできれば会場を本校にして、本校の若手の職員をそこに入れて、外部の職員の方にも来ていただく中でのプロジェクトとして進めさせて欲しいという交渉をして認められました。それが本校の地域情報センター化のスタートです。1年目は本校の教員5人に、教育委員会事務局や市立図書館の若手職員5人でスタートしました。私は当初アドバイザリースタッフというかたちで加えてもらいました。結局毎回ミーティングに出ていましたが。それがもとになって2年目に「パイオニア・スクール・よこはま(PSY)」の指定を受けて4年間進めてきました。

何のためにそれを作らなければならなかったかというと、一つは先ほどお話したように先生の能力だけに依存しない教育内容の提供をというのが1つのテーマ。もう1つのテーマは、表現の仕方が難しいのですが、「学校の社会化」だと思っています。親御さんは社会で生きていらっしゃって、特にこの地域の方々は会社員の方が多く、まさしくビジネスの世界で生きてられる。そのお子さんを預かっている学校で、残念ながら学校という場は閉鎖的なところもあり、学校外の社会の様子とか、社会の流れとどこか隔絶しているところがあります。それは決して職員の責任ではないし、学校の責任でもないと思います。というのは、それが今までの流れというか、学校は教育の場だからそれでよいとしてきているところがあって、そんな中でも優秀な先生方が、自分から殻を破って外と連携していくという事例があったというのが実態だと思います。大切なのは、今自分たちの目の前の子どもをどう育てるかといった時に、社会との関連の中で捉えなければ、ブレていくと思うんですね。でも私が、言葉でそれをいくら言っても、もしくは偉いスペシャリストの方に講演いただいても、その時は理解してもおそらく定着はしないことだと思います。一番早いのは、いろんな方々に学校に来ていただける「場」をつくっていく。学校という場をより公的な場として、社会と近づける。かかわる人を増やし、学校や教育に対する理解者、協力者、参画者を増やすこと。それにより学校すなわち教職員も社会との関係を意識し、理解していく。そんな流れをイメージしてきました。その呼び水としてのプラットホームを作りたいというのが2つ目の理由なんです。この4年間で様々な外部の方と連携ができました。地域というのは狭義の意味で学区内と捉える必要はないですし、青葉区でも、横浜市でも、日本でもいいと思います。とにかく、学校外の方々が入ってきやすくなるような「場」は確実にできてきていると思います。やってみるとわかるのは、それを通して先生方も変わったなぁ、ということ。先ほどもお話ししたように本校の重点研究が「総合的な学習」であり、「横浜の時間」です。これをやっていく時に、サブテーマが地域連携、外部連携なんです。要は、スポットでも出前授業はいくらでもできるんですが、それをスポットにしないで、年間計画の中に巧くプロットしていけば、子どもたちの学習というものがどれだけ深まっていくのか、また、保護者からどれだけ信頼を得ることができるか、それを重点研究と裏表で両面やったから職員の中にも落ちてきたという印象はあります。

そして、サポーターグループがいくつも立ち上がりました。学校図書館なんかはまさしくビフォーアフターの世界で、これ(地域情報センター)が始まる前の学校図書館は、非常に暗くて、あまり入りたくないような感じでしたが、市立図書館の司書の方からアドバイスをもらったり、保護者や地域のサポーターの方々に入っていただき、館内に装飾をしていただいたり、本を綺麗にしていただいたり、学校としてもそこに予算を計上して備品を揃えたりしました。そして、見違えるように図書館は変わりました。また、本校の特徴でもあるワールドサポーター。海外駐在をして帰国された保護者の方々は非常にバランスがとれていて素晴らしい方が多いと思っています。海外日本人学校、海外の現地校、インターナショナルスクールのいずれでも学校に任せっきりにするということはあり得ないんです。保護者が一緒になって学校を作っていかなければいけない。それは非常にコミュニティスクールに近いといえます。日本人社会にとってその学校が必要だから日本人学校ができ、また現地の学校に入った以上は子どもだけでなく親もいっしょにいろいろなボランティアを経験します。そして、3年、5年と過ごされて帰国する。いろいろな経験を積まれた保護者の方が多くて、その方々こそ貴重なリソースだと思い、サポーターグループを立ち上げていただきました。ワールドサポーターの方々には、世界各国の情報を、子どもたちにわかりやすくお話いただいたり、学校図書館や校内に巧く展示していただいています。お陰で、教職員だけでは決して作ることのできない貴重な環境やイベントが沢山できました。そして、他にも、いろいろなサポーターグループが立ち上がってきました。

CHAPTER 3 コミュニティスクールに向けての想い

つつじが丘小学校での外部リソースの活用ですが、これはコミュニティスクールにつながるものとの印象を受けました。現在、全国の多くの自治体、学校で取組んでいるコミュニティスクールですが、これについてどう思われますか?

コミュニティスクールという考え方は、一概に正しいかどうかはわかりません。ただ、その地域にあった教育内容、学校経営というのが当然あるべきであって、その地域にあっているというのは地域が求めているものであったり、そこに住む子どもたちにとってこれから必要であると思われるものであるわけですよね。そのイニシアチブは、その地域になければおかしい話だと思います。その意味ではコミュニティスクールという形はあり得ます。ただし、そのためには、それを支えるコミュニティがないと、コミュニティスクールはもともと無理がある話で、形骸化してしまうと思います。勿論、たとえば京都のように元々コミュニティの基盤があり、番町小学校のように文字通りのコミュニティスクールからスタートしているような歴史があるところで行政がトップダウンでコミュニティスクール化しましょうと、これは巧くいくことも十分あり得ると思います。でも、それを横目で見て、じゃあここの市町村でもコミュニティスクールにしましょうと言ったところで、トップダウンでは巧くいくわけはないと思います。そういう考えが根本にあって、私は順番的には地域の方々がまずは学校や教育を「理解」して、その次にそこに「当事者」として関わっていただき、さらに三段階としてそこに「参画」していこうという方ができ、地域が学校を受け入れるというか、しっかり支えるよと、そういう方々が出てきてはじめてコミュニティスクール化というのがあり得るんだと思います。なので、この1年間は、これまでの流れがこの学校の校風として、学校ブランドとして続けていくためには、その手法としてコミュニティスクール化があるんですよ、というお話を保護者や地域の方々にしているところです。これは、私から一方的に決める話ではなくて、そういう視点で考える方々が増えていく中で、コミュニティスクール化という方向をみんなで進めようよとなれば一番いいかなと思っています。

CHAPTER 4 子どもの「育ち」をグランドデザインする

全国学力・学習状況調査の結果がA問題もB問題も全国平均をかなり上回っているということですが、これは、先にお話しいただいた学校運営のあり方等と関連しているのでしょうか?

A問題、B問題ともに全国学力・学習状況調査でも横浜市の調査を見ても、いずれも平均を大幅に上回ってはいます。ただ、その状況は学校だけでできているわけではなくて、まさしく地域性との問題なんです。要は、子どもの教育、学びについて、学校が分担していること、家庭がしっかり捉えていること、それが巧く連動した結果であるのは間違いありません。放課後を含めて、体力の問題もそうだと思いますが、やはり各ご家庭の教育への考え方、教育力に支えられていることが大きいと思います。たとえば今回の学習指導要領の改訂、その前提となっている学校教育法の改訂の中に、ひとつ目としては基礎的・基本な知識・技能の習得、二つ目としてそれを活用した問題解決能力、そして三つめに主体的に学習に取り組む態度、すなわち学習意欲、という表記が新たに書かれましたが、これは当然1か2か3かという選択の問題ではないですが、地域性の問題というのは、まさしく地域により1か2か3かどこに優先順位、比重をおくかということはあると思います。知識が豊富で、その定着率も高い子が多い本校の子どもたちですが、面白い特徴として、全国学力・学習状況調査の結果の中で、「ニュースとか社会欄の項目に対する興味・関心」が平均と比べて極めて高いんです。それは素晴らしいことで、これはまさしく学校だけではなく家庭の力による部分が大きいです。家庭でニュースを一緒になって見てたり、新聞の記事について親子の会話をしているとか。ただ、それを一つの知識としてというか、単語としては沢山もっているのだけど、ではそれがどういう意味で、どう活用するかまではなかなか難しいです。本校の子どもたちのテーマとして、「自ら考えて、自ら表現できて、自ら関わる」そのような力の育成が必要と思っています。これは、「知識」だけではなく「態度」というか、モチベーションの部分です。地域によって、学校によって、まずは基礎をやらなければならないという地域が当然あって、そこはそれに時間をかけるのは当然だと思います。でも、公立だからと言って目の前の子どもたちが多様にいろんな環境にあるのに、同じ内容というのはあり得ない。ここの地域性を考えた上で、全員が基礎ドリルをずっとやっている時間を確保するくらいならば-ある一定のところは当然やりますが-それ以外は(ドリル学習を)ご家庭で協力くださいと、保護者の方々にお話します。その分、体験的な学習の時間であったり、子どもたちが自分たちで話し合って深めていったり、発表する時間であったり、そういう活動の時間を作れるのが学校の強みだと思います。学力観という意味でいえば、人との関わりの中で使える学力でないと意味がないですから。学習するというのは単なる知識を重ねるだけではなくて、それを友だちなり、仲間なりまわりに向けて関わりを作った時に初めて活用する意味になっていくということを、この時期だから知ってもらいたいです。子どもたちには朝会などでもよく話すのですが、これから生きる力の中で一番必要なのは「協力する力」、「協力する心根」なんです。どんな専門性も、それ一つだけでは生きていけない訳で、他との連携の中で自分の専門性が活かされていくわけです。

昨年の秋でしたが、朝会でマイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』の話をしました。この映画ですが、ただ単にマイケル・ジャクソンというスーパースターの話だけではなく、ダンサーや照明といった多様な才能が結集し、それで漸く1つのパフォーマンスが生まれるという話なんですと。それは、各パートの専門性があのように他といっしょになることによって活かされて一つのものができるんだよ、と。ですから、学力も単に知識だけの話とはしないで、そういう繋がりの広がりの中で使える学力というのを、子どもたちに持ってもらいたいと思います。ただ、それは子どもが分かるだけでは駄目なんです。世の中では、子どもの問題と言われているのはやはり保護者の価値観の問題と裏表ですから。だから、子どもには子どもで学校の活動の中でそれを体験させる。と同時に、ご家庭にもそうしたことを情報として発信して、コンセンサスを作っていく必要があります。

横浜市は学校によって夏休みの期間を変えることができますが、本校は基本規定に近いというか夏休みが長いほうなんです。子どもの「育ち」にとっても、「学力」としても、学校だけで担って、3日、4日長くやったってあまり意味がないと思います。それだったら、学校でできる部分と、それ以外にご家庭がそうした期間に、どこかに連れていくとか、何かやらせるでもいい。もし、ご両親が働いているとか、ご事情がある場合には、学校がなくてもちゃんと受け入れる場所(放課後のキッズ・クラブ)も整えました。学校がどうあるべきかだけではなくて、子どもの育ちにとって、学校がどれだけの範囲を担当し、それに対してどれだけの責任を持ってやっていくか。それと同時に放課後の時間帯、もしくは休日の時間帯も含め、子どもを中心に俯瞰的に見てグランドデザインを考えるべきだと思います。

CHAPTER 5 これからの公教育

公教育のあり方は、ここのところ急速に変化しているように思えます。10年、15年前に考えられなかったという状況が、ここへきて起きています。学校経営もいろいろな表現の仕方ができるようになってきたということで、ある意味、大きなチャンスと見ることもできるかと思います。こうした中で、これからの公教育、学校経営に対しての展望をお話し下さい。

まず、教育行政としてのこれからのあり方ですが、ここはここでしっかり考えて、設計していただかなければなりません。ただ、現状を見たときに現場と遊離して作られているもの(政策)が多すぎるような気もします。今、盛んに言われているのは、地方分権化であり、ある意味各学校における自律的な学校経営、これは本市でもよく言われている現場主義ですね。これはとても大切だと思います。ですが、一方で非常にリスクもあります。というのは、自律的な運営をする時に、今までの学校組織でやってきた、育ってきた教職員の方々がそれを自助努力で打ち破れるかというと-それは教職員の責任ではないですが-学校の世界が、教職員の世界が、非常にクローズドだったために、外との違いとか、自分たちがこう変わらなければいけないとかの選択肢を知識として持っていないことが多い。ですから、先ほどのコミュニティスクールと同じ意味かもしれませんが、一方的にトップダウンで地方分権化、もしくは各学校の裁量の拡大、自律的経営ということを制度的に作っても、ますます差が広がっていくだけだろうと思います。そのためには、地道かもしれませんが、それぞれの学校で、本校のようなかたちでまずは開いていって、理解者から当事者、当事者から参画者というのを地道ながらも広げていく中で、保護者、地域のみならず、自治体や企業、そして教員自身も含めて、社会全体が子どものこれからの学力観を含めた「育ち」のコンセンサスを作っていくことが必要なのだと思います。

この間も、地域の自治会の方々とお話をしていて思ったんですが、『今日食べないと明日はこない』というのは当然だと思います。国の政策にしても教育委員会の施策にしても、『今日食べないと明日はこない』ですから、まず優先順位があるのはわからなくもない。でも、目前の課題に対応することばかりに追われ、これを後回しにしておいたために親の世代の意識がこうなっていて、そのために子どもがこうなっているという悪循環に陥っているということは、誰が見ても明らかです。やはり腹を括って教育の優先順位を上げるしかないんです。教育の問題は子どもの問題のように言われますが、明らかに大人の問題であり、社会の問題です。学校をはじめ教育の場に多くの大人がかかわり、考え、そこに教員も積極的に参加し、いっしょになって教育を支える。個人主義的な考えよりも、社会全体として教育を支えることが結局は自分の子どもの未来を支えることになる、そんなコンセンサスをもてるいいと思います。それをやらないと『明日は来るけど、明後日は来ない』と思っています。

学校授業のスパイス「公教育のあり方を民間の視点で!」画像2

市の北部、青葉区ある校舎です。創立は昭和43年。約600名の児童が通います。

学校授業のスパイス「公教育のあり方を民間の視点で!」画像3 学校授業のスパイス「公教育のあり方を民間の視点で!」画像4

大きな公園に隣接する学校は、自然環境に富んでいます。職員室前には、木蓮が鮮やかに咲き誇っていました。

学校授業のスパイス「公教育のあり方を民間の視点で!」画像5

各スクールサポーターによる活動紹介です。向かって左は、図書館サポーターの活動内容が。本の修理や飾り付け、分類といった活動の様子が写真とともに紹介されています。

マイケル・ジャクソンはロンドンで2009年7月13日から2010年3月6日まで『THIS IS IT』と題したコンサート公演を行う予定でしたが、2009年6月25日に急逝。この公演のリハーサルの模様をソニー・ピクチャーズが映画制作権を獲得、ケニー・オルテガを監督として起用、映画『THIS IS IT』の制作が決まりました。2009年10月28日に「2週間限定」で全世界同時公開しました。