漢字学習を通して自ら学び取る力を育む

1/18号日本教育新聞企画特集記事では、広島県・福山市立西小学校を取材させていただきました。
西小学校では、『漢字のとびら』を今年から全学年でご使用いただいております。
小畠八重校長先生、菊石香織先生、岡川知笑先生にお話を聞かせていただきました。

高槻市立大冠小学校

日本教育新聞「企画特集」と併せてご覧ください。
日本教育新聞「企画特集」2021年1月18日PDF

主体的学びと協働の学びの育成

記者:子どもたちの学習に関することや貴校の学校方針、先生方の取り組みについて教えていただけますか。

小畠校長先生: 本校では「主体的に学ぶ児童の育成」を指導方針としております。教員は児童が自ら学ぶ姿勢になるような工夫をしています。また、子ども同士で教え合う、発表し合う、問題を作り合うという「協働の学び」をできるように子どもたちは日々勉強に取り組んでいます。またICTも活用しながら、子どもたちが自ら創意工夫をできるよう学習を私たちは常に心がけています。

― 菊石先生、岡川先生は授業現場ではどのような授業の方針や取り組みをしていらっしゃいますか。

菊石先生: 「主体的に学ぶ児童を育成する」ために「教員が教えるべきところ」と「子どもが自ら考えるところ」の場面を分けるように心がけています。授業は事前にしっかり問題研究をして、子どもたちが自然に考えたくなるような発問を心掛け、課題を提示できるようにしております。私は6年生の担任をしておりますので、特に高学年においては、子どもたち同士の発言が授業内容につながり、その日に学習した内容を授業では習得できるような工夫をしております。

岡川先生: 私は3年生の担任をしております。子どもたちが受け身にならないように「この問題解いてみたい。面白そう。」という好奇心を持てるような場面を作っています。また、子ども同士の学び合いの中で、答えに到達することができるような場面をたくさん作れるように心がけて授業をしています。

「考えながら」漢字を書く 漢字学習に変化が生まれた

記者:『漢字のとびら』を採択した経緯を教えていただけますか

菊石先生 : 筑波大学附属小学校の算数部の先生方や明星大学教授の白石先生、筑波大学附属小学校の国語部、青木先生が以前広島で研究授業をされました。その際に『漢字のとびら』という教材を発刊しますと白石先生からご紹介があったので、その時から中身は知っていました。漢字の基本・原則を知れば子どもたちは面白いと感じます、と紹介がありました。その後、令和2年の1月に山口で研究会があったので、その際に見本を依頼し持って帰りました。
今年度は福山市の方針で教材を一から見直すようにと通達がありました。子どもたちの学びに寄り添えるような教材を選びたいと思い、他の教員とも話し合い『漢字のとびら』を採択しました。

岡川先生:『漢字のとびら』で一番魅力を感じたところは、漢字学習ドリルでありながら、子どもたちに考えさせる工夫がある点でした。今までのドリルでは「書き写すだけ」で終わっていました。しかし『漢字のとびら』は子どもたちが、考えながら書くことができるようになった点が非常によかったです。
本校では、漢字をなかなか覚えられない子どもが多かったです。そのため、何かしら指導内容を変えなければいけないのではないかと他の教員も考えていました。そこで「書き写すだけ」の漢字学習から「考えながら書く」漢字学習へと転換させようと思いました。

記者:「考えながら書く」ということを子どもたちはどのように実践していますか?

菊石先生:『漢字のとびら』の「書き名人」のコーナーに、あえて間違えている漢字を載せていますが、「点の向き」や「はらいの出る位置」に気を付けるなど細かい部分まで見て確認しながら書いています。また、ノートに漢字練習をして提出した時に「ノーミス10回連続」になった子どもに表彰状を出しています。同じ子どもがもらうことも多いのですが、それでも目標にできることはいいと思います。朝、ノートを提出する前に子どもたちはお互いにチェックをし合うようになりました。子どもが自主的に取り組む姿は今までにはなかったです。

左から、岡川知笑先生(3年生担任)、小畠八重校長先生、菊石香織先生(6年生担任)

子どもの「気づき」

記者:コロナの影響で休校期間がありましたが、子どもたちは家庭学習でどのようなことをしていましたか。

菊石先生: 子どもたちが学習の見通しを持てるように学校のホームページに全教科とも学習の進め方を示し、授業動画をアップし、プリント学習ができるように提示しました。
また、家庭学習も「このページを必ずやってきなさい」という義務としてではやる気をなくしてしまいます。子どもが自主学習として取り組めるように教員は「自分でできるところまでやってみよう」と子どもたちに指示を出しました。学校が再開した時に自主学習ノートを提出させたところ「こんなにやってきたよ」と子どもが嬉しそうに教員に見せていました。

― 休校期間中に子どもたちは『漢字のとびら』を学習していましたか。

菊石先生: 6年生は休校前に時間があったので、『漢字のとびら』の内容を子どもたちに説明しました。「見たまま写すと、間違えている漢字があるよ」など伝えました。

岡川先生: 3年生も同じように一度やり方を説明して、「書き込みをするページは書き込みをして、ノートに練習するなら『漢字のとびら』の書き方をよく見ながら書いてね」と教えてから取り組ませました。

― 学習進度は例年と比べていかがですか。

岡川先生: (11月時点)まだ少し遅れていますが、総合の時間と国語の「話し合いの活動」を組み合わせながら進めています。

― 『漢字のとびら』が役立ったことはありますか。

菊石先生: 今までの漢字ドリルでは「書き写す」ことがメインの教材でしたので、普段は授業で確認する「この部分は何画目」や「間違いを探す」という内容は、子どもたちだけでは家庭で学習できませんでした。子どもだけでは正しくない書き順で書いてしまう子もいるので、それを抑制できます。子どもが興味を持って取り組めるようになり、予習もできたので、休校期間明けの授業では例年よりも早く漢字の定着を図ることができました。そのため、漢字については2学期中に3学期の範囲も先行して学習しています。また、もうすぐ2学期のまとめテストを行うので、国語係の子どもが帯タイムの「学びエイト」の時間で問題を板書し、他の子に答えさせるということをしています。

― 先ほど帯タイムの「学びエイト」を拝見させて頂きましたが、子どもたちが黒板に問題を書いていました。子どもたちが問題を考えたのですか。

菊石先生: はい。『漢字のとびら』で学習済みの漢字の中から、「書き順」「間違い探し」の問題を中心に「国語係」の子どもたちが問題を選んで板書をし、「先生役」をしています。国語係の子は次の時間に国語があることを見越して、事前に問題を作っていました。また、国語係の子が教科書の一文を読んで作品名を答えさせる問題では、弟・妹の教科書や自分の以前使用した教科書から出題したりもしています。

― 子ども自身で問題を考え、出題する。本当に積極的に取り組んでいますね。

国語係の子どもたちによる「学びエイト」の学習風景

― 『漢字のとびら』は授業中には使用していますか。

岡川先生: 漢字のみを学習する授業はしていませんが、最初の10分程度で『漢字のとびら』を学習することはあります。以前は、教科書の中で新出漢字が出てきた時に「この漢字はこの部分に気を付けてね」など授業中に指導していました。今は、新出漢字を覚える時に気を付ける部分は『漢字のとびら』に書いてあるので、子どもたちが自分で確認して学習できます。そのため、休校期間中は自宅で子どもが自主的に学習できますし、休校明けの授業でも教員が指示を出さなくても、「とめ」「はね」「はらい」など子どもが自分で気づくというのはいいですね。

菊石先生: 先生によって指導のばらつきがなくなりました。先ほどの「この漢字はこの部分に気を付けてね」というのは『漢字のとびら』に書いてありますので、指導が統一できたのはよかったですね。同じ学年でも1組と2組で指導が異なることがなくなりました。また、高学年で漢字が得意な子は、何度も書くことに必要性を感じていません。5回・10回とただ書くだけではなかなかやる気になれませんでした。『漢字のとびら』の間違い探しなど、やる気にさせられるのはいいですね。一方で漢字が苦手な子は「あれ?なんで間違えたのかな」と疑問を感じつつも、どこを間違えたのかを確かめずに書いた漢字をいきなり全部消しゴムで消してしまう、ということもありました。考えながら書くことで、どこが違うのか「気づき」が生まれたのはよかったです。

岡川先生: 漢字が苦手な子は、漢字のだいたいの形は合ってるけど、「はねる」「止める」など細かい部分で間違えていました。テストの後に結果が返ってきたときに以前はどこが間違えているのかわからなかった子どもが、『漢字のとびら』を見返すと、なぜ間違えたのかを子ども自身で気づくことができました。
また、漢字の書き順なども規則性に気づき、一字ずつバラバラに覚えるよりも効率よく覚えていく子もいました。この「気づき」を算数にも活かし、整数と小数と分数の関連性のきまりを身に着け、規則性を納得しながら覚えていく子もいますね。

― 子どもたちが興味・関心を持って勉強に取り組んでいますね。
本日はありがとうございました。

School Data

福山市立西小学校

広島県福山市西町
1-14-17
児童数:414名
学校長:小畠八重先生

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