「アイテム」トップ > 活用校の声 > 日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2012 > 日本教育新聞 2012/02/06付 連動企画vol.1

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2015

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 2月6日号・日本教育新聞(企画特集)掲載校として、埼玉県川口市立芝富士小学校にご協力いただきました。本コーナーでは、紙面ではお伝えすることが出来なかったお話をお送りします。

 芝富士小学校は、22、23年度川口市教育委員会『学力向上』研究委託校として、算数指導に力を入れておられます。研究主題は「自分の考えを深め、主体的に表現できる児童の育成~算数科における思考力、表現力の向上を図る指導法の研究」。
 同校では、23年度、全学年で「アイテム」算数を導入。子どもたちの「思考力」「表現力」を伸ばすための具体的な授業の在り方をお話いただくなかで、教材としての「アイテム」の活用方法にも言及いただいております。

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[左]江添信城校長[右]狗飼英典研究主任

*芝富士小学校は、2011年11月11日に研究発表会をされています。取材の前に、記者とともに公開授業を拝見しております。その後のインタビュー内容となっております。

学校長: 江添 信城  / 研究主任: 狗飼 英典
日本教育新聞: 荻野 / ライター: 栗林

「学力向上」研究校のさきにあるもの ~「思考力・表現力」を培う算数授業~

荻野

先日は研究授業を拝見させていただきましてありがとうございました。

 本日は、学校長のお考えになる学力向上という観点から、貴校の学校運営方針、学校として「アイテム」を導入された経緯についてお聞かせ下さい。また、研究主任からは、具体的な現場での取り組みについてお話しを伺いたいと思います。

全学年で、同じ教材を使う

江添校長

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川口市教育委員会「学力向上」研究指定校になるにあたり、1年生から6年生まで同じ教材を使う方が、児童の発達とその成果が分かりやすいと考えました。昨年度までは学校直販の算数ワークを使用していて、ワークとレディネステストから児童のスキルアップを行っていました。児童のスキルアップは今も継続しております。加えて、授業内容を向上していくことも目的のひとつとしてありました。学校の取り組みとして、この学年はやっているけれどこの学年はやっていない、というバラつきがありますと、「学年によってやり方が違いますね」という指摘を、保護者から受けることもあります。指導方針に、一貫した流れがないこともありました。同じ教材を使う事で、どの学年も同じ取り組みを行っていることが分かりやすくなりますよね。また先生方にとっても、担当学年が変わっても、教材が同じであれば進め方も分かって取り組みやすいと思います。
 今までは、授業面は学年ごと、各先生に任せていたところがありました。しかし今回は、統一した内容で、学校として児童に学力をつけていこう、ということになりました。そんな折に、研究主任である狗飼が、筑波大附属小学校の先生が著者である「アイテム」算数を探して持ってきたのです。内容を見てみると、確かにボリュームがありました。ただ、「これぐらいをやりこなせるようにしたいな」と思いまして。思い切って全学年導入に至りました。

今年は導入1年目でしたので、直接書き込ませている学年もあれば、ノートに写して何度も振り返りができるような方法で使っている学年もあります。有効的な活用方法は、これから練っていく必要があるのかなと思っていますね。夏休みが明けた秋口以降になって、どの学年もある程度使い込めてきているのかな、と感じています。まだ完全ではありませんが、子どもたちが、徐々に学力向上の方へ向いてきているかな、と思います。学力面では、問題集を全学年で統一したことで確認はしやすいですね。各学年の取り組みは、「アイテム」を見せてもらい、学習進度も見ながら、使い込みの様子を見ながら、経過観察をしています。

栗林

全学年で統一の教材を導入する意図といいますのは、同じレベルの学力をつけるという点と、同じ指標で学力を測ることができるという点、両方あるという事でしょうか。

江添校長

「アイテム」には難しい問題もありますので、先生方からは「一筋縄ではいかない」という声もありあました。しかし、導入したからにはやっていくしかないのかな、と思いますね。今年度で研究校としての発表は終わりました。でも2年間せっかく「算数」に力を入れてきたわけですから、継続して算数の取り組みは行っていこうとは思っています。まだ「アイテム」への取り組みは1年目なわけです。導入したからと言って、すぐに結果に繋がってくるということではないので、少し長い目で、継続的に取り組んでいきたいですね。「アイテム」には優れた問題が多々ありますので、これを解けるような指導を行っていけば、必ず学力は付いていくだろうなと感じています。川口市からの研究委託は2年ごとです。これは3月に現場の先生方の意向も聞きながら、相談しながら教科や研究内容を決定していきます。せっかくですので、24年、25年と再度算数で委嘱の依頼をしようかな、と考えています。

金額的にも年間1冊、950円は魅力です。学期ごとにドリルを買うよりも安い計算になりますから。教科書は上巻と下巻に分かれてしまいますが、「アイテム」は1冊ですよね。表紙も中も真っ黒になっていくと、子どもにとっては「これだけやったんだな」という達成感につながると思います。書き込み式でも、間違えた問題を直してまた書き込んでいくと、「やった」という歴史がそこに残っていきますからね。自分たちも、受験勉強の時には、参考書が真っ黒になるくらいやると満足感が湧いたのと同じですね。先生方もマル付けするなどチェックをしてあげて、という作業はたいへんですけど、そこはやってくれていますので。

家庭学習の定着

荻野

貴校におかれての学力的なレベルでの課題はどうお考えですか。

江添校長

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23年度は、全国学力調査テストが震災の影響から実施することが叶いませんでした。また、悉皆のテストではなくなってしまったことは影響力が大きいと思いますね。しかし埼玉県では、全国学力調査テストが実施される以前から、県内で学力状況調査が行われていました。埼玉県は、5年生を対象に実施しています。本校も5年生が受けまして、その結果がすでに出ております。まず川口市全体の結果ですが、埼玉県の平均よりもある程度いいです。本校の結果を県平均と比較してみますと、「算数」だけでなく「国語」も他の教科も、7~8ポイントは上回っています。本校は、中学受験をする児童は1割もいません。殆どの児童が、近くの公立中学校へ進学していきます。多くの子どもが受験のために塾に通っているような地域ではないですけれども、その割には頑張っているのかな、と思います。その点については、学校もさることながら、家庭での学習も行き届いていると思います。

一昨年の9月から、本校では「パワーアップ・カード」というものを作りました。学校でもしっかりと指導を行っていくのですが、家庭でも行っていく必要があるということで、『学年×10分+10分』と定めて、そのカードで家庭学習の点検を行っています。担任の先生にはちょっと負担になるかもしれないのですが、毎日カードをチェックしてもらっています。その取り組みも1年以上やってきているので、家庭学習の定着も、学力向上の成果として出始めているのかなと思います。学力調査テストの結果はその年によって多少差はありますけれども、ここ2,3年は力をつけてきてるな、と実感しています。これは、塾に行っている子どもが少ないところでの結果ですから、本当に子ども自身が頑張っているんだといっていいと思いますね。

「アイテム」との出会い

荻野

次に研究主任である狗飼先生に伺います。「アイテム」を知るきっかけについてお聞かせください。

狗飼主任

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22年度、本校が川口市から「学力向上」研究校として委託を受けた時に研究主任になりました。しかしそれまでは、『算数指導』についてあまり詳しい方ではありませんでした。算数が専門ではなかったので。研究主任に任命された時、すぐ頭に浮かんだのが、筑波大附属小学校・算数研究部の盛山先生でした。以前、川口市内の別の学校でお授業をされた時に拝見しました。自分の中では、その時の授業の印象がとにかく強く残っていまして。本校が「算数の研究をやる」と決まった時、盛山先生が真っ先に浮かびました。それからは、筑波大附属小学校で開催される算数研究会へ月に1度は通うようになりました。何度目かの研究会会場で、「アイテム」が展示されているのを見つけました。その場で内容を見たところ、メリットの多い教材だなと感じました。重たかったのですが、1年から6年まで見本を学校へ持ち帰りまして。すぐ学校長のところへ行き、「こういう問題集があるんですけど、本校でどうでしょうか」と提言したところ、「ではやってみようか」となりました。

本校では、22年度に「子どもたちに発表力が足りない」という課題が上がっていました。授業の話合いの場面でも手の上がる子どもが少ない、ということです。研究委託校として「算数」を教科として掲げ、「研究目標」は何にしようか、と考えた時に、やはり『表現力・思考力を高める』ということが課題としてありました。では、表現力・思考力を高めるためには?と考えた時、「アイテム」は思考力を上げる問題集というコンセプトが全面にでていましたので、「これだ!」と思いました。「アイテム」の内容が本校の「研究主題」にあっていた、ということですね。

「思考力・表現力」を付けたい

狗飼主任

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本校はどの学年も同様なのですが、市販のドリルやテストの結果を見ると、評価観点4つのうち「知識」「技能」「理解」は高いんです。平均でも85~90点は取れるんですね。ただ、「数学的な考え方」という観点に「思考力・表現力」を評価する項目が入っているのですが、その項目だけがどの学年も低く、平均で80点前後です。「思考力・表現力」を強化するにはどのようにすればいいのか、ということが本校のポイントでした。

「アイテム」には、考える問題が多いですよね。繰り返し計算問題を解くことが趣旨のドリルとは違いましたので、その点が大きく影響しました。ただ、「アイテム」の活用方法という課題は数多くあります。まだ今年が1年目ですから。この取り組みを1年で終わらせてはいけない、と思います。本校の先生方に、どのようにより有効的に使ってもらうかは、私自身の課題でもありますし考えていかないといけないと思っています。

「学校全体で、全学年使いましょう」と決まった時に、各学年一律に「このように使ってください」ということは、敢えて決めませんでした。「先生方に使い方を見つけてもらう事も、研究の一環として進めていきましょう」と学校長が言ってくれました。今年度も2学期半ばをすぎましたし、そろそろ各学年の意見をまとめないといけないですね。もしかしたら「いや~ドリルの方が…」という声がでるかもしれないです。そのような先生方にはしっかりと対処していかないといけないですよね。

これは教材だけに限らず何に対しても言えることですが、『新しいものに変える』ということは、とても勇気のいることです。反対意見も多くあがります。ですから、活用方法についてはとても気を遣いました。導入1年目は、まず各学年の先生に委ねてみよう!と決めたのです。初めて他の先生方にアイテムを見てもらったときは、殆ど反応がなかったんです…。本校で「アイテム」を使うことのメリットは、導入前、事前の校内研究会で私から先生方に伝えました。芝富士小には「授業研究推進部」というものがあります。各学年に研究部員がいますので、その先生に「来年度の教材として、どうでしょうか」ということで「アイテム」を渡しました。最初、低学年ではあまり…という声もあがりましたが、学校長から、「導入するなら全学年でやるべきだ」というように勧められました。

「アイテム」の具体的な活用方法

狗飼主任

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今年度、本校でのアイテム活用方法としては、大きく分けて2パターンあります。下段のドリルは、以前使用していた繰り返しドリルと取り組み方は同様です。算数ノートとは別に、ドリル用ノートを1冊作って、何度もノートにやらせています。上段の問題部分は、授業以外でも朝自習や宿題として活用しています。私の学年では、「書き込みでもいいから、4つのステップから自分がやりたい問題を選んでやっていいよ」は言っています。レベルや進度は子どもによって違うので、とにかく自分で(問題を)選んで解いてごらん、と言います。宿題でも同様ですね。

しかし、各学年とも同じ方法で進めているわけではありません。上段の問題部分も、「書き込み式」で進めている学年もあれば、何度でも出来るようにノートに書き写してやっている学年もあります。どの学年も足並みを揃えて、というのは難しいと考えました。とにかく使い方は先生に委ねるようにして…。
もしかしたら、探究の問題「チャレンジしよう」は全く手が付いていない子どもいるかもしれないです。導入前に「全員が全てを解くという問題集ではありません」とも伝えてありましたから。思考力自体、子どもによって差があります。その子によって解く問題が違ってもいいんじゃないかな、と個人的には思っています。そこが「アイテム」のいい点ですよね。ドリルは、どの子もやる問題が一緒ですからね。

荻野

「アイテム」という一定の範囲の中で、自由度を持たせて、個別対応をされているということですね。

栗林

今現在、他の先生方の反応はいかがですか?

狗飼主任

使い勝手が悪ければ、「よくない」という声が上がると思うのですが、今のところ聞かないので…。その点はポジティブに受け取っています。

子どもの自主性を磨きたい

荻野

貴校に置いて、次のステップはどのようにお考えですか。本校が目指される到達点はどのようにお考えでしょうか。

狗飼主任

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「アイテム」の活用方法は、各学年これから吸い上げていかなければいけないのですが、私個人としては、子どもたちが問題を解いて楽しい!もっとやりたい!と思えるような、子どものやる気に沿った教材にしていきたいと思っています。具体的に言えば、朝自習の時に「比例の単元をやろう」とこちらが言ったときに、自分はこの問題を解くぞ!解いてみたい!と思える子どもにしたいですね。「ドリルの●番の問題を■題やりました」ということでは、子どもの思考力は付いていかないと思います。子どもが自主的に問題に向かうことができれば、きっと授業にも前向きになってくると思います。

今までは、授業でも子どもたちが「受け身」だった気がするんですね。それが2年間研究を進めていく中で、子どもの姿勢が少し変わってきたな、と思っています。子ども自身が解いてみたい、と思う問題は一所懸命解いてみる、とかですね。先生も、子どものこの考えはクラスでみんなに広げようかな、と思ったりですとか。「アイテム」と研究の両方が、様々な方面に影響を与えているな、と感じます。「アイテム」の影響力がもっと大きくなって、多くのことが良い方向へ向いていけばいいな、と思います。

授業で「伝え合い活動」をやりたい!

荻野

公開授業の中で、3,4人のグループになって意見交換をする場面がありましたよね。

狗飼主任

指導要領が改訂されて、算数的活動がより明確に打ち出されました。そのことで、「自分が考えたことを、人に説明をする」という活動が増えたんですね。従来の授業ですと、誰かが手を挙げて意見を発表しますね。それはクラスの中のたったひとりの意見でしかないのですが、間違った意見や違う意見がなければ授業は次に進んでしまい、子どもたちの活動はそこで終わってしまう。そういうことが多々ありました。しかし校内研修の中で、「説明はクラス一人ひとりの子どもが行わなければ、活動をしたことにはならないんじゃないか」という意見が出ました。そこで、最初は授業の中で2人組を作りました。でも2人だと、お互いの考えを相手に聞いてもらうだけで、活動が広がらなかったんです。一方通行の「伝え活動」になってしまうんですね。「伝え活動」ではなく、「伝え合い活動」を本校ではしたい、と考えました。「子どもたちに、自分の考えたことを表現させたい」ということを研究主題に掲げていましたので、授業の中で表現できる子がひとり、ふたりしかいないのでは意味がないと考えました。グループの人数を4人にしますと、(4人)全員がそれぞれの考えを共通理解するのに時間がかかります。そこで、「3人ひとグループでやりましょう」となりました。伝える力が強い子、弱い子が一緒になるようにした3人のグループで。まず、3人グループの中で自分の考えを持つことが出来るようになって、人に伝えることで考えが深まって、少しずつ自信が持てるようになって…。クラス全体の前でも発表する勇気、自信に繋がればいいな、と思います。

荻野

3人グループで伝え合いをする取り組みを始められたのは、研究がきっかけですか?

狗飼主任

そうですね。

「発表ボード」に書いて伝える

江添校長

3人グループになった時に、それぞれが小さいホワイトボード(発表ボード)を使って発表する、という取り組みをおこなうようになったのは今年度からですね。

荻野

かなり子供たちの中に「発表ボード」を使って表現することが定着しているように見えましたが…

狗飼主任

問題解決の授業の時にはその「発表ボード」を使うようには心掛けてはいますね。

荻野

算数以外の教科でも使用されているのですか?

狗飼主任

現在使用しているのが4,5,6年生ですが、まだ他の教科にまでは広がっていないですかね。

江添校長

社会科の授業で使っている学年もありましたけどね。あとは休み時間に友達同士で使っていたりね(笑)。

狗飼主任

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漢字の書き順指導の際に使ったこともありました。時々書き順をごまかす子どももが出てくるので、大きく書くように指導しながら。まずは子どもに「書いてみたい」と思わせることが大切かな、と思います。

教科に関わらず、「言語活動の充実」が現在とても重要視されています。「算数」で言えば「図」を使った表現、「表」を使った表現が、「言語活動の充実」に当てはまると考えています。式表現に、「図」表現や「表」を使った表現を加えさせていくと、よりわかりやすい説明になりますし、子どもの思考力というのはこういう活動で高まっていくのかな、と思います。
ですから本校は、「3人組、発表ボードを使って表現力を高めていく」ということに取り組んでします。時に2人組になってしまう場面もありますが。

栗林

「思考力・表現力」の向上について、学校長は成果や手ごたえを実感していらっしゃいますか?

江添校長

人に説明することで、より考えが深まっていくという部分ですね。子どもは、分かっていても人に説明が出来ないということが結構多いですよ。人の前で発表をする。しかも聞いている友達が分かるように説明をする、ということは、理解の深さに繋がっていくとは思いますね。「発表ボード」に書いたり、自分のノートを見せながら話をする、という「伝え合い活動」というのは、「思考力・表現力」を高めるひとつの手法となると思います。

ボードにしてもノートにしても、自分の言葉で何かに書く、ということ自体かなり難しいですよね。現実的に言えば1,2年生はノートに書くことが精いっぱいでしょう。実際に授業で「発表ボード」を使えるのは、4年生以上だなと感じています。11月の研究発表会を見て、1年目であれだけボードに書けるようになれば、まずまずかなと思います。これから段階を追っていけば、もっともっとうまく表現できる要素はあると思います。

狗飼主任

研究を始める前の授業は、ひとりの子どもが発表すると、先生が「いいですか?」と尋ねて、「いいです」とみんなが答えたらおしまいだったんですが、それではいけない、と盛山先生からご指摘いただいたんですね。

江添校長

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授業というのは、子どもたちの中から色々な意見が出て、練り上がっていく中でどんどん深まっていくものなんだ、と。これは筑波大附属小の授業を見ていく中で勉強しましたね。より思考力を深める授業をしたいと思っていた時に、盛山先生の提案授業を拝見し、いみじくもその授業に多少なりとも本校の授業が近づいてきたのかな、と思っています。

盛山先生が本校にいい提案をしてくださったからだなと感謝しております。盛山先生には、今年の夏に本校に来ていただいて、先生方に直接お話をしていただきました。その時はまだ、本校の先生方の考え方と、盛山先生の思考には大きな隔たりがあったんですね。盛山先生の授業の進め方を聞いた時は、まさに目から鱗が落ちるような感じでした。「へぇ~~」という声が先生から聞こえてきそうなくらいで。9月終わりくらいから研究発表会の指導案作りに入るときになって先生方の考え方も変わって、現在のかたちに変わったというところです。その間は、本当に模索しながら、やっと取り組み方が分かってきて。授業が出来上がっていったというところです。

栗林

今のお話については、先日拝見した授業を見て納得、という感じがします。6年生「速さ」の単元導入を拝見しましたが、あれほど多くのアプローチ方法があることに驚きました。同時にとても新鮮に感じました。

芝富士小学校が目指す授業像

荻野

現在は、その取り組み方をつかんだところだと思いますが、今後の貴校のビジョン、課題についてお話しいただけますでしょうか。

江添校長

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これは盛山先生の言葉ですが、「算数はマジックだ」とおっしゃるんです。子どもたちが楽しくなければ授業ではないと。その「楽しさ」というのも、授業を進めていく中で、「楽しさ」がどんどん子どもの中に生まれてくるものでないといけない、と。当然、クラスの中には学力の差というものがあるのだけれども、授業には、どの子どもも参加が出来る、その都度子どもが食いつける課題を与えていきながら授業を展開する、というお話しを盛山先生がされました。本校もそのような授業を目指していきたいな、と考えています。付いてこられる子どもだけを引っ張っていく授業ではいけないと思います。

公立小学校には様々な子がいます。どの子どもも「楽しい」と思えるような授業づくりを目指したい。その意味では、本校ではかなり「発問の工夫」をしています。どの子にも先生の発問が分かり、「よし、この問題解いてみよう」と思えるような発問の工夫をすること。またクラスの中で、分かっている子が分からない子に伝え合い活動をする、話をすることで「あ、分かった!」と思えるようにすることですね。そして最終的には、みんなの意見を練り上げていくような授業。算数の面白さが、もっともっと発展していくような授業にしたいと思っています。

「発問の工夫」「伝え合い活動」「練り上げ」この3点にはこだわっています。この3点を来年度以降も継続する中で、「算数の楽しさ」を体感しながら学力も付けていく。ただ「算数が楽しい」だけで終わってしまってはいけません。「楽しさ」+「学力」ですね。これは必然的に比例していくものだと思っています。楽しければ、子どもの学習意欲は向上します。そうすれば学力も付いていく、ということですね。

そういう意味では、スキル的な算数の勉強ではなく、今までお伝えしたような授業を展開していくことで算数的学力をつけたいと思います。他にも「100マス計算」「インド式算数」など様々なメソッドがありますよね。そのようなスキルも大事かもしれませんが、それ以上に、今の日本の子どもたちの課題となっている「算数・数学的な思考力・表現力」を付けていく授業を、本校でいかに展開していくか。そこが次年度以降の課題になってくると思います。

「授業力向上」=「学力向上」 ~校内で授業を磨く~

狗飼主任

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本校にとって、一番の課題になってくるのが「授業力」だと思います。授業のテーマは「考える算数」。教材研究もそうですが、真摯に授業に向かって取り組めるようになると、本校全体の学力はもっと上がるのではないかと思います。

「授業力向上」=「学力向上」ということが大前提にあります。以前校内研修の時に、「いいですか?」「いいです」の授業を行っていては、子どもたちの「思考力・表現力」のアップには繋がらないと思います。授業の見直しと改善が必要なのではないでしょうか、と先生方に提案したことがあります。しかし、その時の先生方の反応はとても冷静でした。「アイテム」導入の時にも同じお話をしましたが、新しいものを現場に取り入れようとする時、周りから反対を受けたり、拒否されることが多いです。自分が筑波大附属小で学んできたことを、学校に戻って先生方に伝えた際にも、なかなか受け入れてもらえない、取り入れてもらえないという壁にぶつかりました。子どもの発言をもっと評価していきましょう、と言っても、なんで?そんな必要あるの?という意見が出たりしました。なかなか先生方に浸透していかなかったですね。でも実際に盛山先生に本校に来ていただいて、授業をしていただいたら、他の先生にもその考え方、取り組みがバシッと伝わりました。まだ日が浅いこともありますが、研究への取り組みが本校の先生、全員にまで深く浸透しているかというと、十分ではないと感じています。もっとみんなが主体的に取り組む研修になれたらいいなと思います。

本校の職員室には、「算数授業公開のお知らせボード」を作っています。「○月○日、△年△組で授業公開をやります」ということを書いてもらうためのものですが、まだなかなか書き入れてくれるクラスは少ないですね。確かに、自分の授業を他の先生に見せる、というのは大変かと思います。思ったようにいかない時ももちろんありますから。でも、そういう経験を繰り返しながら、みんなで授業について話が出来る職場になったらいいな、と思っています。それが出来たら、学校全体でもっと授業力が向上してくんじゃないかな、と期待しています。懸命に指導案や板書計画を作っても、その通りにいかなかった…、どうしてなんだろう?どこがいけなかったんだろう?と感じたときは、先生方の中で意見をぶつけてもらい、一緒に考えていく。それだけでも充分じゃないかなと思っています。かといって、毎日行っていたら先生方も疲れてしまいますけどね。(笑)

江添校長

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本校は、各学年のクラス数が2クラスと多くありません。ですから、研究発表の前などは先生方を相手に模擬授業をして、発問の仕方や展開方法について意見交換をするということもありますね。そういうことを日々重ねていくことで、知らず知らずのうちに教員も力をつけていってくれたらな、と思います。「授業力」もそうですが、教員としての資質の向上につながっていくのではないかと感じています。

子どもの思考を探るというのは、とても大変ですよ。同じ授業を行っても、そのクラスによって、その子どもによって出てくる意見や考えが読めないところも多々ありますからね。同じ授業を、授業者を変えて行ってみるなど、校内研修を大切にしていく必要はありますね。授業者一人のための研修ではないですから。どの先生も成長していけるような学校になるといいな、と思います。

狗飼主任

私個人としては、時には授業が失敗してもいいんじゃないかと思うんです。何度か繰り返していく中で、段々と授業が進化をしていったらいいと。

江添校長

公開授業を見に来てくださった先生方の中には、「芝富士小は、授業にチームで取り組んでいる」と感じていただいた方が多くいました。授業研究については、学校内で共通理解を図りながら全員で取り組むように心がけています。

教育基盤を支えるもの

荻野

研究授業の時に感じたのですが、先生もお子さんもみんなげんきですよね。

江添校長

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算数研究の前に「食育」もやっていました。本校の児童はとにかくよく給食を食べます。もちろん、児童の中には食の細い子もおりますが、みんな一生懸命食べる、どんな食材でも食べていくんだ!くらいの気持ちですね。教育を受けるための基盤は、体作りです。体が育っていくと、学力面も自然と伸びていくと思いますね。当然学校だけではなくて、家庭の協力もなくては続かないことです。「食育」の取り組みでは、「文部科学大臣賞」をいただきました。賞をいただいたこ とは、学校にとって名誉なことですが、子どもたちにとっても名誉なこと。家庭にとっても名誉なことです。保護者の方も、日々それぞれの事情があるなかで、学校の取り組みについては意識して下さっているのかなと感謝しています。食事ひとつをとっても、時には手抜き料理もあると思います。我が家でもそういうときがありますから。でも、本質的には「それは子どもにとってよくないことなんだ」という意識を持っていれば、大丈夫なんじゃないかなと思います。

基本的に、朝ご飯をしっかり食べて、学校で毎日ちゃんと授業を受けていれば、学力は上がっていくのではないでしょうか。まずは食べること。これが学力の基盤になっていると思いますね。本校は「残菜ゼロ」ですからね。こんな学校は市内、県内探してもあまりないのではないでしょうか。給食の時間が終わると、食缶はいつも空っぽです。栄養士の方の努力もありますね。本校では、給食の時間に栄養士さんが全部のクラスを回るんです。そうすると、誰が何を嫌いか把握できるんですね。時には食べられない子の隣に行って、その食べ物の大切さ、栄養分などを話して、食べられるように応援する。そうしたことを続ける中で、だんだんと好き嫌いがなくなっていった、という感じですね。

荻野

保護者の方の学校への対応、評価というのはいかがですか?

江添校長

本校はPTAもよく協力してくださいますし、幸いにしてモンスターペアレントのような保護者はおりません。何をとってもご家庭の協力がなくては進めていけませんので。細かなところは各担任がその都度、学級だよりであったり保護者会で説明をしてくれてますから、全体会などで大きな問題は出てこないですね。お互いの信頼関係があってこそかな、と思っています。

*この度の取材に快く応じていただきました川口市立芝富士小学校様にスタッフ一同心より御礼申し上げます

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