「アイテム」トップ > 活用校の声 > 日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2013 > 日本教育新聞 2013/01/28付 連動企画vol.3

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2013

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  日本教育新聞・企画特集(1月28日付)連動取材の第三弾は、大分県大分市立下郡小学校です。
 取材日(2012年11月26日)は、同校の学力向上支援教員である中村雅子先生と筑波大学付属小学校・算数部の山本良和先生の公開授業がありました。その様子も交えて、後藤恵美子校長に子どもたちへの課題提示のあり方等について、また中村雅子先生には「アイテム」を活用することの意義についてお話をいただきました。

子どもたち一人一人に「わかる」喜びを

下郡小学校の子どもたちにつけたい力とはどのようなものでしょうか。

後藤校長

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後藤恵美子 校長

 子どもたちにつけたい力は、「思考力」、「活用力」というのが話に出ていますが、やっぱり「活用力」ですね。そして、いつでもその場にとどまらずに、「探究心」をもって次に進むということを考えながら、自分で切り開く力が欲しいなと思っています。
 本校の子どもたちは、数年前に国語教育の指定校になったこともあり、書いて発表するという力はかなりついています。ですから、国語の読み取る力はけっこうあるんですね。そのわりに、惜しいかな、算数の「思考力」や「活用力」がもう少しというところがあります。
 また、実際のところ、全体的に子どもの様子を見ると、活発に発表をして、そして自分の考えを高めているんですが、やはり中には、不参加をしている、おとなしく座っていれば、なんとか1時間何も言わなくても済むんじゃないかなというふうに、自然とそういうふうに育っている子どもたちが、クラスの中に数名いるのは確かです。その子どもたちも引き出してあげて、学ぶ楽しさを分からせたいと思っています。「アイテム」の言ってるように『学んで、分かって、楽しいな!』という授業に引き込んであげたいなと考えています。

そこは、とても大事なことですよね。算数の授業が分かったとかじゃなくて、算数の授業楽しいな、もっと勉強したいなと思う意欲を育てるというのは、やはりとても必要なことなのかなと思うんですけどね。そうでないと、計算機があるから計算問題はいいじゃないかということになってしまうというか。

後藤校長

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 中学校、高校に行くと、だんだんおとなしくなっていくんですね。分かってることを前に出さなくなる傾向があります。それをやはり、小学校の間で、自分で消化しながらそれを外に発信できる子どもになってほしい。自分の考えをそこでとどめないで、言うべきことは言わないとねというような子どもを育てたいなと思っています。

課題提示の在り方

教科全体の強化活動の中で、例えば、学校の先生方に教科を組み立てて指導するときに気を付けてほしいことはありますか。

後藤校長

 私は課題を大事に思っていたので、そこに留意しながら先生たちの授業を一人一人見ています。記録も取って、写真を撮り、こちらの評価した内容をお返ししています。その中でのポイントは板書になります。子どもをうまく引き出せているかというのは、板書の中にそれが現れてきますので、ここのところで子どもをどれだけ引き出せたかというところで評価をしています。
先にも言いましたが、課題作りというのはとても大事なことと考えています。筑波大学付属小学校の山本良和先生が講演の中で『先生がおぜん立てして用意した課題はだめですよ』と言われているのを聞いて、もう一度考え直さないといけないなと思いました。子どもの目線に立ってこちらも考えているんですが、やはり、教師側の都合のいい、授業の展開がうまくいくような課題を持ってきている傾向にあるなということで、(山本先生のお話には)一石を投じられた思いがしました。

本日の公開授業の中でも山本先生はそうした展開をされていました。でも、一般の先生がやろうと思うとけっこう難しいんじゃないかなと思うのですが。

後藤校長

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 難しいですよ。どんどん広げていって、そこをどう落とし込んでいくかというのは、非常に高いスキルが要求されます。あれほどの方だから、途中で子どもの出方によって組み立てを即座に変えられたんですよね。こちらも授業するときには、もちろん提案授業や公開研をするときには、何通りも考えて、子どもの出方、予想を立てて向かうんですけど。やはり、自分がいいなと思ったものを、なかなか授業の途中で変えられない。でも、こういうことが出ればこういう課題で行こうとか、2本柱3本柱で考えていれば、授業の流れを急にでも変えられることができるかなと。(今日、山本先生の)お話を聞いてみて、1本で全部きちんとまとめておくんではなく、2案、3案を持って授業に臨まないといけないなと思いました。次から課題作りをどう職員に指導するかというときには、その点に留意していきたいと思います。

その手法って危機管理の考え方と一緒ですよね。ネガティブにいろんなこと出しておいて、実際来たら、もうポジティブにその場で対応するっていう(笑)

後藤校長

 そうですね。柔軟な考えがこちらにもないといけない(笑) 子どもたちだけに要求するんじゃなくて、教師側にも柔軟な考え方をやっぱり育てていかないと。それはまた、管理者の役目かなと思います。得てして、形にはまってしまうので。

授業を子細に評価する

学校内で、校内研究というか、授業を見せ合ったりとかはされていますか。

後藤校長

 互見授業というのをしております。互いに見るというので、互見授業というのをしておりますので、職員がここ全員で53名いるんですが、学級数が30学級ですので、30の授業を見ることになります。私自身も、1学期から多くの授業を見ています。立ち位置とか、黒板に書いている内容とか、教師がどんな表情で授業に対面しているかというのを、写真に撮って渡すんです。そしたらとても喜ばれます。もちろん上に評価が、丸や三角でついているんですが(笑)

それはドキドキですね(笑)

後藤校長

 でも、具体的にこういうところが良かったとか、こういうふうにするともっといいんではないかというようなコメントを入れて、写真を張り付けてお渡しするので、とても好評です。これに関しては、以前勤めていたところで3年間同じようなことをしてきましたので、やはり、最初の年にはコメントまでで写真を付けていなかったんですね。でも、次からはやっぱり、自分の姿は見えないものですから、授業のときの様子を見させてあげようと思って。せめて写真でもということで。ビデオは嫌がりますよね。映されたのを全部見るのは恥ずかしいというので、写真にしてお返しをしております。先生たちを育てる一つの方法ということで、それをしております。

先生が喜ばれるというのは、やはり、自分の授業の様子を客観的に見られるからということですか。

後藤校長

 そうですね。細かいところまで見てもらって評価をもらうっていう。子どもと同じで通知表をもらうような感覚ですね。例えば、声の出し方はどうか、表情はどうか、課題の提示のタイミングはどうか、教室環境はどうかとか、項目を全部作っていますので、それによって評価します。二重丸から丸、三角と。それは私なりのシートなんですけど、それを作っています。別にそれでガミガミと言うわけじゃないので(笑)

「アイテム」について

今後、算数科の研究の中で、ブラッシュアップしてやっていこうかなというのはありますか。

後藤校長

 「アイテム」といういい教材に出会いましたので、現在、3年生と5年生で採択していますが、他の学年でも系統的に使えたらなという考えはあります。ただ、こちらから取りなさいという考えでは絶対伸びませんので、やはり教師が見てこれは使いたいと、子どもの気持ちと同じですが、やってみたいと思ったところで導入すれば、もっと系統的になるのがうまくいくと思います。

「アイテム」を体験させること

そもそも、「アイテム」を使おうと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

中村先生

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中村雅子先生

 二年前、前任校で「アイテム」の見本を取り寄せました。算数の学力向上を含めて、先生方の授業改革と、新学習指導要領を受けた授業改革はどうあるべきかということを考えたときに、「アイテム」が適していると、拝見して思ったんです。
 書店に行ってもたくさんの書籍、プリント集等がありますけど、問題の質がいいのか悪いのかということは、判別するのが難しいというのが正直なところです。そこは、筑波大学附属小学校の先生方、日本における教育の第一人者である先生方が作った問題は間違いないと思ってましたし。
 前任校は、全校児童四十人ほどの小さな学校なんですが、子どもたちには、学んでることは日本一だっていつも言っていました。基礎基本にこだわり過ぎると子どもたちの自尊感情は高まりません。「アイテム」にある問題を見るだけでも素晴らしい体験だと思います。
 今年度、この学校に赴任してきたんですが、ここでも紹介して、2学年で採用していただいたんです。

難しい局面を楽しむ

授業の中で使われているということでしょうか?

中村先生

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 はい、単元の終末の段階で、本時の学習の定着させたいと、少し難易度を上げた「Aダッシュ問題」を設定して、子どもたちに投げかけてるんです。学力向上支援教員として、1、2学期で30数校、計30時間ぐらいの公開授業を本校以外の学校でもしましたが、必ず「アイテム」の問題を「Aダッシュ問題」に設定して、子どもたちに解かせています。
 教師というのは、どうしても低学力層というか習熟の覚束ない子どもたちばかりに寄り添ってしまって、上位の子を伸ばせないこともあるんですが、こういう「Aダッシュ問題」を設定すると、大方の子どもたちがどんどん学ぶというか、難しい状況を楽しむ感じになっていきます。

子どもたちが「アイテム」に触れる機会は多いのですか?

中村先生

 本校の場合、子どもたちは「アイテム」にいつも触れてます。家庭学習に宿題としたり、夏休みの学習に活用したり、また授業の中でもと様々に使っています。自分たちが解けない問題にも触れていることは、チャレンジ精神の涵養という意味でとても大切なことだと考えています。
 今までは活用問題とか、ちょっと質の高い問題というのは、教師がプリント集から選定して子どもたちに与えていました。しかし、実際には、それを選ぶのも、こちら(教師の側)に算数の力がないとできないですよね。でも「アイテム」があると、いろいろなレベルの良問を子どもたちに触れさせるだけでもできるので、優れものだな、と。

「アイテム」を使うことで、子どもたちにどんな変容が見られますか?

中村先生

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 解けなかったり、難しいとくじけてしまったり、躓いたりとかいう事もあるのですが、先にもお話しましたように、子どもたちは、そうした場面に直面しても、その状況を楽しむという姿勢が育っています。本時で分からなくても、次には『解いてやろう!』と思ったりとか、そういう「問題解決力」というのが自然に身についてきているように思います。
 今の3年生に出会った当時、なかなか手ごわい子どもが多かったんですが、今では、授業の中で、問題の解決方法等を一生懸命相談したりしています。難しい学習でも、楽しんでいるところがあるんですね。これは、他の教科の授業でも(同様の効果が)表れているのではないかと思います。

「活用」問題と「探究」問題

単元で求めている「活用」を、先生自身が把握するときに「アイテム」を参考にされるとのことですが。

中村先生

 実際、「活用」の意味合いや定義は、現場では曖昧なところがあります。指導要領を見ても、文面は分かるんですが、はっきりどんな問題をというのが難しいんです。これが「活用」で、こういうふうになると「探究」になるんだというのが、「アイテム」には明示されているんです。

「学力向上」=「人間力」、「豊かな心」

最後に、中村先生の今後の目標をお聞かせください。

中村先生

 できれば全学年で使うことで、子どもたちが使い慣れるようにしたいと。やはり、系統的に見るのが子どもたちにとっても学びやすいと思います。それで教師の授業の質がいいように変わると思うんですよね。家庭学習の質も変わるだろうし、夏休みの課題も今まではプリントを一生懸命してましたが、「アイテム」を使えば、全然困らないですし、計算ドリルもちゃんとありますから。
 現在、大分市内の多くの学校で「アイテム」を紹介しているところです。公開授業行ったりとか、その後で研修を行ったりしていますが、プレゼンをするときは、いつも併せて紹介しています。
 学力向上についてですが、大分県全体の中で認識が高まりつつあります。「学力向上= 点を上げる」ことだというふうに勘違いされている方々もいらっしゃいますが、本当は「人間力」を育てるとか、「豊かな心」を育てるということに直結しているんですけども、そこも含めて訴えています。私の責務がとにかく大分市の学力向上なので、市内の学校にどんどん薦めないといけないなと思っています。(笑)

*公開授業の際に取材をさせていただきました。ご多忙の中、丁寧にご対応いただきましたことスタッフ一同厚く御礼申し上げます。

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