「学び合い」の中で息づくアイテム
次にアイテム算数の具体的な活用方法についてお伺いします。
中村文彦先生
アイテムは導入して今年で2年目です。基本的に各単元とも「練習しよう」「たしかなものにしよう」習得の2ページは全員がやることにしています。ぐんぐんコースでは、問題の内容を確認しながら「活用する力をつけよう」「チャレンジしよう」にも取り組みます。単元学習構想の中に、この授業までにアイテムのこのページはクリアしましょう、と位置づけをしています。また、下段の計算ドリルは朝学習15分の中で使用しています。
アイテムについては、近隣校で使っていたので見たことはありました。内容を見た時に、質の高い問題が多いな、と思いました。しかし本校職員も自分も実際に使うのは初めてなので、1年目の夏に研修会をやり、他の学校の活用事例なども参考にして本校に合った使い方を模索していきました。アイテムはひと単元4ページ構成になっていますが、見開き2ページ(習得)なら、本校でも十分使えて力を付けていけると思いました。ちょっと背伸びしたいなという子たちに対しては活用ページの問題も使えます。子どもの実態と照らし合わせた時に、アイテムに向かう姿が想像できました。
導入前に、普通のドリルのように全てやると思うと負担かなと思いました。「最低限ここまではやる」というラインを決めたら、あとは子どもの実態に応じて進めればいいと思いました。授業だけではどうしてもやりきれないだろうな、という子もいます。その場合は放課後や昼休みに算数教室で指導することもあります。自主的だったりこちらから声をかけたり。担任の先生に言われてくる子もいますけどね。その中でいいなぁと思うのは、算数教室に来て勉強している子がいると、同じ学級や同じ学年の子たちも来て関わってくれるんですよ。子ども同士で勉強する場面もあって嬉しくなります。少人数指導に半年取り組んできて、成功するかしないかのキーは学級づくりだと思います。基礎になるのはやっぱり人間関係ですね。
少人数指導を成功に導くには
日置幸嗣校長
今年の全国学力学習状況調査はある程度満足できるものでした。今年は人的な加配をいただいたので、全学年で算数科少人数指導が可能になったのですが、昨年は5年生と3年生しかできませんでした。学調を受けた現6年生は、昨年度算数科少人数指導に取り組んだ学年です。
今年はまだ試行錯誤し、先生方が悩みながら苦しみながら進めているところが非常にあります。しかし、少しずつ手応えも感じ始めています。まだその段階ですので、本当の成果は来年かなと思います。来年も継続してこの指定を受けられるかどうかはまだわかりませんが、今年1年取り組んできて、少人数指導のノウハウ、メリットを作り出すシステムは見えてきました。もし全学年で取り組めなくても、ポイントを絞って継続するべきことだと思っています。
少人数指導に取り組むには人的配置、すなわち、加配がないと実現できません。ですから、加配がいただけるように、次年度に向けての要望もしっかりと行わないといけませんが。
貴校では中心となって引っ張ってくれる中村先生の存在も大きいですね。
中村
全体的には見ていますが、どうしても5、6年中心になりがちなところがあります。3、4年生の少人数担当の先生は去年の経験も財産もあります。3、4年生にもう一人いてくれるのは大変ありがたいです。色々と相談もしてくれますので統一してやっていけます。お互いの連携が大事かなと思うんですね。
校長
今年度の体制として、中村先生を少人数担当として位置付け、学級担任からは外しました。中村先生は指導教諭です。正直、経験値のあるベテランの先生を担任から外すというのは苦渋の決断でした。しかし、今年は少人数指導をきっちりと進めたかったのであえて担任からは外しました。生徒指導面や研修全体も請け負って頑張ってやってくれています。責任感もありますし非常に助かっています。
今年度の指導体制「算数科少人数教育推進のために」にもとづいて、中村先生を中心に各学年が毎週時間を決めて定期的に打ち合わせをしています。つまり、「算数指導統一事項」「算数指導の系統表」をふまえて単元学習構想を立て、コース別の指導ポイントなどの確認を毎週行うわけです。
この体制は今年スタートしたばかりですし手探り状態のところがありますので、はっきりとした成果や手応えはまだわかりづらいのです。その中で、全校が一致して取り組むこともはっきりしてきました。例えば、問題の質がそろって学年の系統性が保てることで分析しやすくするために、単元テストも全学年で同じ業者のテストを導入しました。さらに、朝学習、家庭学習の取り組みも全学年で統一したり学年の系統性を持たせたりしています。
検証する時間を取ることで、躓きのポイントや子どもの気付きが見えてくるし、学校全体で共有することが大事なのでしょうね。
少人数指導と学び合いの融合
今日の授業ではじっくりコースとぐんぐんコースとで類似の問題で数字を置き換えてやられていましたが、課題の設定はコースによって変えられているのですか?
中村
数字を少し変えたりはします。また練習問題や活用問題に触れる数ですね。短い時間で解ける子が多いぐんぐんコースは解く問題の量が増えます。でも、例えば6年生ですと、単元テストの平均点を見るとかなり近接してきた感じです。最初の頃は二極化が顕著でしたが、現在はどちらも高い得点率になっています。そういう意味では今の体制で、学力が上がってきたなと実感しています。点数もそうですが、学習に向かう姿勢がとても変わってきています。
子どもたちのモチベーションを保つ秘訣はあるのですか? ぐんぐんコースの子とじっくりコースの子に差を作らない、というような…。
中村
本校は年間8回の土曜授業があります。そのうち4回分には、全学年、全学級、少人数指導ではない算数の授業を1時間必ず取ってほしいと提案しています。学級に戻す時間、ということです。学力差がある中で学び合いをして欲しい。ちょっと背伸びしてジャンプの課題に挑戦する、したくなるような授業をしてくださいとお願いしています。本来の「学びの共同体」に戻したかたちで。いろんな子の「分からない」が聞けて、「説明できる子いるかな?説明してみて」と繋げる。本当はそういう関係性の中で、子どもたちの学びは深まっていくと思います。そのような思いもありながら、今年は習熟度別少人数指導で頑張ってみようと。