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日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材2018

高崎市立南小学校(学校長 茂木智先生)は、次期学習指導要領を見据えた授業改善に全校で取り組んでいます。「子ども自ら考えたくなる授業」の実現を目指すなかでの、アイテム算数の位置づけと子どもの変容について、茂木校長先生と前田教諭にお話を伺いました。

日本教育新聞企画特集取材記事(2018年1月15日付)と併せてお読みください。

授業改善のツールとして

授業改善や算数アイテムの活用に全校で取り組むにあたって、どのような方針や枠組みでスタートされたのでしょうか。

茂木校長
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校長 茂木智先生

 まず初めに、アイテム自体は特別な存在というわけではなく、あくまで子どもの考え方や対話に重きを置いた授業改善のなかの一つのツールとして捉えています。育むべき子どもの思考力・判断力を今までは『考える力』と大まかに捉えていましたが、次期指導要領の目玉である『学びに向かう力』や『切り開いていく力』のように明確にしていかなければならないなか、具体的に、私は特に対話力や説明力を子どもに付けさせたいと思っています。そういった学び合いをしていくための基礎的な能力の養成を「低学年はこういう目標でやりましょう。高学年はこれでいきましょう。」と授業の流れのなかに位置付けることからはじめました。
 昨年度スタートの段階では、高学年でしっかりできるかどうかに目がいってしまったのですが、二年生や三年生の授業を実際に見たときに、「あれ?これ、高学年よりもむしろ低学年や中学年のほうが、こちらの意図した授業に子どもたちが食いついて、子ども同士の壁が無く自然に自分の考えを発言し合っている。さらに先生がそれら個々の考えを書き出し、紙に貼って見える化するというのが、子どもにとってはすごく自信につながっている。」という状況が見えてきました。
 そこにアイテム算数のような教材が登場すると、アイテムの問題を起点として子どもは自分から一生懸命、自分の考え方の他にも別の子どもの考え方やもっと違う考え方を見つけようとする『思考の広がり』につながっているというのが一番良いと私は思っています。

指導要領のお話や対話力・説明力を身に付けさせたいというところはすごく共感するのですが、先生たち個々の指導スキルや経験が異なるなかで、そういった授業改善の取り組みをどのようにまとめていったのでしょうか。

茂木校長

 本校へ着任した当初、力のあるベテランの先生が多く、今までの指導方法に自信を持っておられるので、いきなりそこを変えるのはなかなか難しいだろうと思いました。ただ、私が教育センターで教員研修をやってきた人間だったので、高崎市の学習過程スタンダードに基づき授業の流れの共有化を行い、皆で共通して進めていけば、子どもも『自分で課題を見つける→自力解決で一生懸命考える時間→その後学び合いのなかで考えをぶつけ合う時間→最後に振り返る』という授業スタイルに慣れてくるだろうと思い、とにかく最初の校内研修でできるところからやり始めました。
 私が一番驚いたのは、もう今年退職して居ないですけれども、昨年の六年生主任の授業参観に行ったときに、「もっとこの場面でこういう話し合いをし、子ども同士最後のまとめでもあのような発表がせっかくできているから、あの場面は発表だけで終わってはもったいない。前のグループの発表を聞いて、どこが違うのかとか、自分たちはこう考えたとかってつなげるといいですね。」という話をしたら、すぐ1週間後に授業でやってくれて、さらにそれを他の学年の先生にも紹介してくれました。
 さらに、私自身は最初難しいと思っていた低学年でも、学び合いを目指した授業を取り入れてみたところ、先程お伝えしたように、子どものほうから食いついてきた状況でした。そのように少しずつ出来るところから、学力向上コーディネーターの前田教諭中心に揃えて進めていきました。

授業の流れの中では、最初の段階の問題提起や課題設定が重要で、さらに先程のお話のような子どもが考えたくなる授業のためには、授業の中でそういったきっかけを多分に与えられるかどうかが重要ですね。

茂木校長

 高学年の場合は課題設定ができると思っていましたが、私が昨年感心したのは、それを中学年の三年生でやってくれたことです。どの教科でも「今日何を勉強しようか」「こういうところなんだけど、何にしよう」といったように授業の最初に課題を見つけ、単に先生がめあてを書くのではなく、「こういうふうにしようか」と子どもと折り合いつけることで、子どもは自分が考えようとしたことと学習内容をつなげることが出来ます。その点を、とにかく先生方に実感させたかった。先生だけがしゃべっていても、実際子どもの身に付いているかどうかは分からないよということを。
 なぜ中学年でこういった試みがすんなりいったかというと、高学年になるとどうしても子どもの中で子ども同士のランクが見えてきてしまいます。「あの子ができる、あの子はできない」ということがある程度暗黙のうちに分かっていて、できる子どもの発言を待ってしまうこともあります。しかし、子どもそれぞれの考えというのは横並びの違いであって、各々の考え方の違いをもっと大事にし、壁をなくしていけるのは、低学年中学年からの繋がりがあるからなのだと思います。そういったなかでアイテムの発展問題をみんなで解けば、発想の違いや、むしろつまずいている子だからこそ分かることが出てくるんですよね。つまずいている子のほうも、できる子どもと話している中で「ああ、そうだったのか」と分かる場面を、何度も見てきました。

朝学習でのアイテム活用

そういった授業改善への取り組みや趣旨は、朝学習でも同様に「この題材だったら子どもにここを話し合わせるようにしよう」と生かされているのですね。

茂木校長

 朝学習の20分は子どもにとって、普段授業でやっている教科の学習とは少し違った興味関心があり、クイズ的な要素が含まれた特別な時間なんですね。特に朝学習のなかでアイテム算数を扱うと、低学年なら「自分はこういう発想をした」ということを発言し合い、高学年なら「僕はチャレンジまでいった」といった充実感にもつながります。
 授業でもそうですが、当然、理解の差や能力の差はあります。担任としては「どこかで高いレベルの子を輝かせる時間を作りたいな」「ここはみんなで学び合いをして最低限の習熟をさせたいな」という思いがあるじゃないですか。普通は、基礎的・基本的な技能は全員付けさせたいと思い、基礎を固めてから発展という考え方になります。でもそうではなく、アイテムの発展問題を一題取り上げみんなで取り組み、理解の進まない子が一緒に学ぶことで、できる子の発想になかった点も加わりながら、その子は応用問題こそできないけれど、できる子と話しているうちに、基本的なことが分かるようになったりするんですね。
 また、特別支援学級の子どもは情緒や知的、どこまで学習が進められるかということもそれぞれ違いますが、みんなで一緒に問題に取り組むねらいを持った朝学習の時間であれば、基本的に一緒になって取り組める子どもたちです。大きなます目の問題のようにヒントがつかみやすい題材を教員が工夫して選んでくれているので、少し特別な問題でも違和感無くまわりの子どもと一緒に取り組んでいます。

子どもにとって、先生にとって

茂木校長

 私は、教員は基本もっと楽をしてほしいというか、しゃべりすぎずある程度子どもの活動に任せて、コーディネーター役をしたほうが、喉もつぶれないしいいだろうと思っています。教材研究や授業の準備も全て自分でするのは限界があります。アイテムのように幅広く利用できるものを、予算は掛かるけれど保護者に理解してもらいながら、やったほうが良いですね。教員は真面目な人が多いので、ようやく話題になってきている長時間労働も平気でやってしまい、それは必ずしも授業の質に繋がるわけではないですね。活用できるものをベターの中から選択するという必要性を管理職としては強く感じています。
 さらに言えば、教員にとってきりがないところをずっと詰めていっても、子どもの定着がどうなのか、興味、関心がどうなのか、学びに向かう力は本当に付いているかということに関しては、自己満足に過ぎないかもしれません。もっと子どもを信じて任せ、大事なところだけを押さえればよいのではないかなという気がします。

コーディネーターというお話では、授業を見せていただいた算数主任の前田先生は、普段、算数専科として5,6年のみに入られているのですか?

茂木校長

 そうですね。教務主任のため時数はあまり持てないですが、若手グループの授業への助言、また研究授業の前には模擬授業にも入ってくれています。校長が「これがいいぞ」と上から言うより、教員目線で伝え広げてくれる人がいるというのがまた大事ですよね。
 先程朝学習を見ていただいた先生は、昨年ベテランの先生が持った学年を持っています。4月当初はなかなか子どもの声が全部拾えず、私が授業参観に行ったときは「えっ、先生、絵で描いちゃ駄目?」とか「二年生のときにやったやりかたでやっちゃ駄目?」と言っている子どもの声が十分に拾えず、同じやり方にもっていこうとしていました。そういうときには、他学年ではどういう授業をやっているか、「例えば算数だったら、算数の終わった時間の黒板を見るといいよ」とか「1日1回は、ちゃんと主任の所の黒板を見にいきなさい」と伝えました。その結果今のような形に持っていけるようになっています。
 当初は3年計画と思っていましたが、今の三・四年生が五・六年になったら、対話力や説明力をしっかり身に着け、自分の考え方がどういうものかを自信もって説明でき、相手の考え方を自分と比べながら聞ける、そういう思考力を持った子どもが多くなるんじゃないかなと願っています。高学年でしっかり身に着けることもできますが、それは本物じゃないというか…それより低・中・高で積み上げてきたものがしっかり繋がっているというところを感じていただけるといいなと思います。

全校での授業改善の取り組みのなかで一貫しているのは、自分の考えを持ち、相手の考えを聞く力を育む機会を、いかに授業の中に織り込んでいくかということなのですね。

茂木校長

 そうですね。必ずそういう場面を作らざるを得ないというか、そこがメインにはなっています。うそをつけないのは、子どもの振り返りで、『わ・が・とも』なんていうふうにすると、『わかったこと・がんばったこと・ともだちから学んだこと』が何も出てこなければ、何も残って無いのだなという教員の振り返りにもなります。
 昨年低学年に提唱したのは、単に「何かの発表のときは、必ずひとつ前の子の意見を聞く」ことでした。よく学校現場や校内研修で課題になるのは「発表はできるけど、他の子の意見を聞けないよね」ということです。前の意見を聞くことを意識するには、まずは前の発言を誰がしたかを意識させる。発表させるときは、低学年の場合最初は「同じです」「違います」でもいいけど、それがだんだん「○○さんはこう言っていたけれども私はこう思う」というように聞く耳が持てるようになり、比較ができるようになる。そういった他の子どもの意見や解き方考え方に耳を傾けるという過程のツールとして、アイテム算数はうまくはまったという感じです。
 もちろんどの学年にも下位層はいて、さらにはどうしても真ん中の子どもたちを何とかしなきゃというところに教員の目が向きがちです。そうすると上位層が伸びなかったりするじゃないですか。でも幅のあるアイテムのような問題集があれば、多少なりともそういう子にもケアができます。上位層への対応は、あまりにも「全体を引き上げなきゃ」という思いが強いと、見落とされてしまいます。例えば、一つの問題を丁寧にやり過ぎる。授業は45分しかないのに。もっと解けるのに。もっとやらせて次の興味を引き出せるはずなんですね。そうしないともったいない。そんな中で埋もれてしまう子がいないとは限らない。それだけの知的好奇心を持っている子どもたちや、教え込み過ぎなくても自ら学ぶ力がある子どもたちは、これからの指導要領の趣旨に合うような方向に無理なく持っていきましょう、と。それこそアイテムはドンピシャなわけです。

授業の流れ

前田教諭
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 算数は、例え答えが一つであったとしても、その答えを導き出す過程に様々な方法や考え方があり、そういった考え方を子どもから引き出すところが、難しさでもあり面白さでもあります。子どもにとって、色々な考え方に触れることこそが算数の面白さにつながると思うので、その点をいつも大事にしています。

今日の授業は『円を使って正多角形をかく方法を考える』という授業でしたが、いつも最初は教科書を伏せたまま、例題を提示し、子どもに考えさせるやり方ではじめられるのですか。

前田教諭

 そうですね。授業の流れは「授業の流れのメニュー表」を黒板横に掲示し、いつでも子どもに学習の流れがわかるように示していますので、子どもたちは基本的な流れは理解しています。算数の場合は、既習内容をいかし、課題を解決していくことが重要ですので、最初に前の時間の学習内容の振り返りをした後、本時の課題に取り組ませます。また、『めあて』から『まとめ』まで授業を進めていく中で、「あれも教えたい。これも教えたい。」「こんなことにも気付かせたい。」ということが沢山出てきて、内容が盛り沢山になってしまうこともあります。ですから、授業のゴールを見据えたタイムマネジメントを意識して授業をするようにしています。今日の授業では、『円の中心のまわりの角を8等分して、半径と縁の交わった点を順に結べば正八角形をかくことができる』を授業の終末でおさえられるようにしました。

算数アイテムの位置づけ

授業の流れのメニュー表のなかに算数アイテムも位置付けられてましたが、教科書の問題からアイテムの問題に移るという流れはずっとやられているのですか。

前田教諭

 授業後半の基本的な流れとしては、子どもたちは、本時のまとめを行ってから、教科書の練習問題(鉛筆問題)に取り組み、その後、振り返りの学習感想を書き、教科書の補充問題(レッツトライ)に取り組みます。アイテムはその後に取り組む流れです。今日は本時の学習内容を発展させた問題がアイテムの問題の中にありますので、補充問題を割愛し、全員アイテムの問題に取り組ませました。このような一連の流れを授業の学習過程スタンダードとし、「算数はこのような流れを基本としてやりましょう」と、他の先生にも声をかけ、共通理解を図っています。
 アイテムは基礎基本から応用発展問題まで網羅されているので、発展的な問題ができない子どもでも基礎的な問題で達成感を味わえますし、さらに学力の高い子は難しい問題にチャレンジして解決できた喜びを感じることが出来ます。例えば、今日の授業の中でもありましたが、教科書に載っている問題だけでは物足なさを感じる子どもには、アイテムの活用問題をピックアップして「この問題、やってみよう」と指示を出します。時には子どもに任せて、自由にアイテムに取り組ませることもありますが、子どもの実態に応じて活用問題に取り組ませるのか、基礎的な練習問題に取り組ませるのか、その時々で助言するのは先生の役目になります。

ちなみにアイテムは、実際、1冊のどれくらいを消化するのですか。

前田教諭

 やはり、個人差があります。アイテム以外にも問題集がありますので、「アイテムは一年間で全て仕上がらない場合もあります」と保護者にも了承していただいています。それでも、全て仕上げる子も中にはいます。40人いれば20人か、25人くらいでしょうか。また、長期休暇中に「これまで学習したところや、やり残したところをやりましょう」と声をかけると、できる限り頑張って取り組んでくる子どもが多くいます。そのなかで、アイテムの取り組み方の優先順位も決めてあります。子どもの実態に応じて、まずは練習問題、習得問題、活用問題に取り組むように指示します。その次に余裕のある子どもには、下の計算ドリルに取り組むよう指示します。学年によって取り組み方も様々で、3年生や4年生の中学年は朝学習の時間に通常の授業のように教師が指導をし、子どもたちが興味関心を持ち意欲的に取り組んでいるという声も聞きます。

学び合いと授業改善

前田教諭

 アイテムの進度に個人差があるように、授業をしていても、理解の早い子どもや、積極的に手を挙げて発言をしたがる子どもがいる一方、そうでない子どももいます。理解するに時間のかかる子どもはTTの先生に支援をお願いし、反対に理解の早い子どもには、私から新たな課題を与えるといったように、役割を明確にしながら授業を進めていきます。
 自力解決の場では、一人で考える時間を十分に与え、子どものノートに「あたってるよ、丸。これいいね、丸」と丸を付けながら机間指導をします。そうすることで、どの子どもにも自信をもって発言できる機会を多く与えるようにしています。理解の早い子どもだけがどんどん発言して授業を進めていけたら、それはそれで、スムーズに授業が進んでいくとは思うのですが、理解するのに時間がかかる子ども、手は挙げなくても頭の中でしっかり考えている子もいます。それぞれの子どもたちに活躍の場を作ってあげることが大切だと思っています。その一つとして、学び合いの活動を取り入れ、子ども同士の対話を通じていろいろな子どもの考えに触れ、自分の考えと比較しながら考えられるようにしています。「自分の考えを友達に伝えられてよかった。」「自分の考えを深めることができた。」という学習感想も見られるようになりました。
 これからも、子どもたちがしっかりと学習内容を理解するとともに、算数を自ら学び続けることができるよう、常に授業改善を重ねていくことが必要になると思っています。

School Data

高崎市立南小学校
高崎市立南小学校
〒370-0849
群馬県高崎市八島町70-1
児童数:253人

パンフレット「アイテム算数のご案内」

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