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日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材

2023

日本教育新聞

日本教育新聞「アイテム」

企画特集 連動取材

Vol.1

個別最適化の学びをすすめる教材として評価

福岡県・福岡市立草ヶ江小学校

1/16号日本教育新聞企画特集記事では、福岡県・福岡市立草ヶ江小学校を取材させていただきました。
福岡市立草ヶ江小学校では、『i・tem算数』をご採択していただき、今年度で3年目。
小学2年生~6年生で使用中です。
池田昌弘校長先生、学力向上主任の宮崎麻世教諭にお話を伺いました。

日本教育新聞企画特集取材記事(2023年1月16日付)と併せてお読みください。

認知能力と非認知能力の育成

日本教育新聞記者:

まず池田校長先生にお聞き致します。
貴校の教育方針として、どのような児童を育てていきたいとお考えですか?

池田校長先生:

本校は、授業を通しての学力向上、日々の生活指導、人権教育をすることで子どもたちに充実した学校生活を送ってもらい、その中で育てていきたいと考えております。
どのような児童を育てていくか。本校では、認知能力と非認知能力をバランスよく育成していくということが重要と考えております。
まず非認知能力を育成については、コミュニケーション活動が重要です。特に子ども同士のコミュニケーションがとても重要です。本校ではコミュニケーションの第一歩である、「あいさつ」に力を入れています。「草ヶ江あいさつ日本一」というキャッチフレーズのもとに「あいさつ」をきちんとやっていこうと子どもたちに心掛けさせています。場面・相手に応じた、相手を思いやるあいさつをしようという取り組みをしています。
このキャッチフレーズをもとに子どもたちも「あいさつ委員会」を中心にあいさつを日々大切にし、委員会活動と連動しながら「草ヶ江あいさつ日本一」に取り組んでいるところです。

記者:

「草ヶ江あいさつ日本一」というキャッチフレーズは子どもたちにとってわかりやすいものですね。認知能力の育成についてはどのように心掛けていらっしゃいますか?

池田校長先生:

認知能力の育成については、教職員が授業内容を充実させることで、子どもたちの学力がきちんと身に付くはずであると考えております。「授業が児童の学力向上の肝である」と自校の教員に常に話しています。

さらに学力向上のためには、個別最適化の学びが重要と考えております。子どもたちの学力に応じて、基礎基本を身に付けなければならない子ども、より発展的な学習をさせる子どももいます。
本校の校区内は、学力が高い子たちが多い傾向にあります。ただし、学力を分布図で表すと学力が高い子が多いものの、習熟度がまだまだの子どもも少なからずいます。同一の課題を全員に与えても、クリアできない場合が散見されます。多様な子どもたちに対応するためには、画一的な指導・画一的な教材では対応がしきれないと考えております。個別最適化の学びを実現させるための教材が必要です。

記者:

その求めている教材に合致するのがi・tem算数だったのですね?

池田校長先生:

左:池田昌弘校長先生
右:学力向上主任 宮崎麻世教諭

そうですね。例えば基礎基本の問題中心の画一的な宿題を出しても、分かっている子どもにとっては繰り返しをさせているだけになってしまいます。
一方で、基礎基本が未習熟の子どもが宿題を持って帰っても、できないので宿題に手をつけない。やってないことを叱られる。そのような場面が今までにありました。
学力を伸ばす上では個々の学力に合わせた教材を提供して、一人一人伸ばしていくという視点がとても重要だと思っています。

このように、コミュニケーション能力の向上で非認知能力を、個別最適化の学びで認知能力を子どもたちに伸ばしてもらいたいと日々教員は考えております。

i・tem算数を導入してからの変化

記者:

i・tem算数を導入したきっかけについて、教えて下さい。

学力向上主任 宮崎麻世教諭:

本校はi・tem算数を採択して3年目になります。昨年までの2年間は家庭学習の新しい在り方ということで、先ほど池田校長先生がおっしゃったような、それぞれの児童に合わせた家庭学習を模索し、i・tem算数を使うことになりました。
今まで使っていた計算ドリルでは、画一的な宿題しかできず、「子どもたちの学力が付いているのか?」「計算問題20問繰り返すことが子どもたちの学力を伸ばすことになるのか?」などたくさん疑問点がある中で、先生たちの意識を変える上でも、i・tem算数に教材を変えようということが発端でした。
3年前のコロナ渦で、新年度が始まってから6月まで、ほとんど子どもたちが登校できませんでした。教職員は、自学自習ができる子に育てておかないといけないという社会の風潮もありました。教職員間で話し合って、どうすればより効果的な個別最適化の学習を子どもたちに提供できるかと悩んでいました。
i・tem算数を導入した当初は、今まで使用していた計算ドリルのように子どもたちにすべての問題を解かせないといけないというような思い込みが私たち教職員にもあったので、どのように使っていこうかといろいろと議論が上がりました。i・tem算数の冒頭に記載されている使い方にも載っているように、その子どもに合わせて「ここまでは子どもたち全員に取り組ませてみよう」「できる子には骨のある問題にチャレンジさせてみよう」ということで、学校で統一して使っていました。
当初は、「活用・探究部分の問題を取り組ませるのは難しいのではないか?」という教職員の意見も多かったのですが、子どもたちが4月の時点では解けなかった問題も、1年が終わった3月になると解けるようになっているという出来事もありまして、一人一人の子どもの能力だけではなく、時期に合わせて活用できる点が、i・tem算数を採択し、子どもたちにとって良い傾向になりました。

記者:

i・tem算数の基本的な使い方を教えて下さい。

宮崎先生:

スペシャルアイテムに挑戦

教科書で単元の学習をした後に、学習のまとめとしてi・tem算数を使用しています。授業内で早く問題を解き終わった子がどんどんi・tem算数を進めていくこともあります。また家庭学習の課題として与えることもあります。自分で進んで学習する子もいますので、どんどん先に進んで解き進める子もいます。
i・tem算数は「導入」「習得」「活用」「探究」の4ページ構成になっています。子どもたちの現在の学力や学年によって、多少の学習方法の違いはありますが「活用」までは必ず全員が終わるように促していきましょうという方針があります。

記者:

導入当初に先生方にi・tem算数のご使用に抵抗はありましたか?

宮崎先生:

導入当初は、今までの計算ドリルを使用して学習させるイメージが教職員にあったので「年間1冊なので重たい」「単元の順番が教科書と順番が異なるから使いにくい」という声がありました。しかし、本校が「自主的な学び」「主体的な学び」を目指して、授業の中でも家庭学習でも取り組んでいくため、「子どもたちに合わせた教材がとても役立つ」「子どもが進んでどんどん予習をします」という意見がしばらくすると教職員からあがってきました。
また、今年6月頃にi・tem算数をとても上手に活用されている他校の先生がいらして、研修を行いました。その中で学習参観や家庭学習でのi・tem算数の使い方を学び、日々の授業や家庭学習を取り組ませる際に参考にさせていただきました。

記者:

今年ご使用3年目を迎えて、先生方や子どもたちにどのような変化がありましたか?

宮崎先生:

i・tem算数を使用した授業

i・tem算数を導入したから伸びたかと言われれば、はっきりとは言えません。ただ学力向上の一因にはなっていると思います。
先日の算数のまとめテストの結果で学年の93%の子どもたちが、100点満点のテストで90点以上を獲得しました。
また「学びの広場」という学校内の掲示物に、子どもたちが家庭学習で使用したノートを全校で共有できるように全学年掲示をしています。子どもたちが自分からやってみようという主体的に学ぶ姿が見えてきました。

記者:

テストの結果が素晴らしいですね。掲示物は掲示された子どもも掲示物を見た子どもにもいい影響が出ていますね。
i・tem算数のどのような点が子どもたちの学力向上の一因になっていると感じていらっしゃいますか?

宮崎先生:

自学自習ができるシステムになっているところがいいですね。「導入」部分に教科書の説明にあたる内容があるので、子どもたちが解説を読み返しながら類題を解くことができます。 先ほど「単元配列が教科書と異なっていて、使いにくい」という声があったのですが、私としては指導要領の分類に基づいた構成になっている点が、特に学年末にとても役立つと私個人としては思いました。
先ほど「子どもたちが4月に解けなかった問題が学年末には解けるようになっている」と話しましたが、子どもたちが自分の成長を実感でき、子どもたちに「頑張って取り組んでみよう」と呼びかけると夢中になってやっています。

記者:

自発的に子どもたちが学習に取り組んでいらっしゃるのですね。子どもたちのモチベーションを上げる工夫を他にもしていらっしゃいますか?

宮崎先生:

少し話がずれてしまうんですけど、コロナ渦の2年間で家庭学習に力を入れていました。休校中も教師はサポート役として、子どもたちに接していました。
当時3年生のクラス担任をしていましたが、ある子どもが算数と国語が苦手でした。算数・国語は自信がないけど、「英語だったら3年生から始まったから頑張れる」とその子は英語をすごく熱心に取り組んでいました。また、普段の生活など他の場面でも自己決定ができるようになりました。
i・tem算数も子どもたちが自分で学習する部分を決められます。「自分で学習する部分をきめることができる教材」という点が、計算ドリルとは大きな違いだと思っています。
自分で問題一つ一つに取り組む、児童たちにとってもまとめの時期に子どもたちに達成感が生まれて、できなかった問題ができるようになって、算数へ興味が生まれて、次のもっと難しいもやってみようという流れができてきたと思います。子どもたちのモチベーションアップにもつながっています。

自律的な学習

記者:

池田校長先生にお聞きします。学校全体としてi・tem算数で個別最適化の学びを推進していくにあたって子どもたちにどのような力をつけてほしいですか?

池田校長先生:

i・tem算数が個の能力に応じて使えるということから考えると、非常に評価できる教材だと思っています。6年生だったら6年生のi・tem算数を使わなければいけないという感覚があるかもしれませんが、私は当該学年に固執する必要はないと思います。6年生であっても5年生の学習がまだ十分でなければ、5年生のi・tem算数を使えばいいと思っています。私は以前、中学校の校長をしておりました。中学校の校長時代に全生徒の学力分析を、大学と一緒にやったことがあります。その際にどの程度の学力があれば、中学校の学習で伸びて高校受験に対応できるかというのを調べてみました。結果は、小学校段階で最低でも4年生の内容を理解している学力がないと、中学校3年間での伸びは厳しいという結果が出ました。小学校の校長として、小学校卒業段階ですべての児童を、最低4年生以上の学力で卒業させて、中学校に送り込む必要があります。
また本校は、私立受験する子も非常に多いので、上を目指す子は上を目指せるような形で、i・tem算数を活用できるという点で、画一的な教材ではないという点において非常に評価できると思っております。

記者:

興味深いお話ですね。リアルな現場の学力という考え方のお話で、全国の公立小学校の先生方がご参考になるところだと思います。
i・tem算数についてお二人にそれぞれ読者に向けたお話ということでいただきたいと思います。まず宮崎先生からいかがでしょうか。

宮崎先生:

i・tem算数を通して子どもも教師も保護者も、今までの従来の算数に対する見方が変わり、学習方法に対する見方が変わりました。私たち自身もi・tem算数を使用していく中で勉強になる部分があると思っています。また子どもたちにとっては、夢中で解く問題がたくさんある、とてもいい問題があふれている教材だと思います。「算数の楽しさ」を実感できるのではないかなと思っています。

記者:

「算数の楽しさ」は大事なフレーズですね。
池田校長先生にお聞きします。学力向上の問題は全国の校長先生にとって喫緊の課題となると思いますが、全国の公立小学校の校長先生方に向けてお話しいただけますでしょうか?

池田校長先生:

今までの公教育は、平均的な学力を子どもたち全員が身に付けなければいけないという考え方が強かったと思います。例えば宿題にしても、「他律的な学び」を学校が子どもに押し付けてきたように思えます。「計算ドリルを何ページしなさい」「漢字を何百字書きなさい」私の考えでは、これでは子どもたちの学力は伸ばしづらいと思います。
例えば、漢字を見ただけで覚えられる子どももいるかもしれません。算数・数学も「数学の合理性を学ぶ」「数学の美しさを体感する」ということがとても重要であって、他律的に「ノルマとして課す」ことは子どもの自律的な学びになりません。子どもの能力に合わせて、自律的な学びをどう育てていくかが重要です。i・tem算数は、子どもたちが自律的な学びを推進していくことに非常に有効であると思います。
「教師が言うから」「親が言うから」勉強するのではなく、「自分が楽しいから勉強する」そういう子どもを育てるための一つのツールとしてi・tem算数を活用できると評価しております。

記者:

「自律的な学習」と池田校長先生が仰いましたが、指導現場として宮崎先生が実践されていること・気を付けていることはございますか?

宮崎先生:

私は最初宿題について興味があり、「教員はなぜ宿題を毎日課すのだろう。子どもたちはなぜ宿題を解いているのだろう」という問いがずっとありました。宿題を課すことで「子どもたちがやればやるほど勉強が嫌いになっていく」「先生たちが毎日大量のノートを見る仕組み」「果たしてこれが子どもたちにとって学習効果になっているのだろうか?」と考えていました。子どもたちは宿題を強制的にやらされて勉強が嫌いになってしまうのではないかと思いました。そこで本校では「宿題から家庭学習へ」という転換をしました。「宿題という言葉を廃止」しています。「家庭学習は自分のために学ぶ時間」という位置付けにしています。
もちろん基本的な学力は学校でつけます。しかし家庭学習は子どもたちが「自分でやりたいこと」「好きなこと」「研究してみたいこと」「興味を持ったこと」に充てる時間であると位置付けています。学校では教科書を進めなればならないですが、子どもたちの自己決定の場面は教員の工夫次第で、もっと増やせると思います。授業内でも「グループで学習する場面」「ペアで学習する場面」「1人で学習する場面」などできる範囲で仕組むようには普段からしているところです。

記者:

強制をさせないことが、子どもたちのモチベーションアップにつながっているということでしょうか?

宮崎先生:

子どもたちは「好きにやっていいよ」って言うと、すごく喜んで学習します。i・tem算数においても「やりなさい」と繰り返し言わなくても、好きな子はどんどん進めていきます。その姿を見た他の子どもたちが刺激を受けていきます。習熟度がまだまだの子はi・tem算数の導入により、すぐにできるようになったわけではありませんが、「楽しい」「進めたい」と子どもたちのスイッチが入りやすくなったので、教師は応援する立場、支援する立場でいいと思っています。

記者:

他の科目にも算数と同様な効果が出ていますか?

宮崎先生:

基本的に家庭学習には教科の枠がないので、図工などさまざまな科目をする子どもがいます。子どもが学習したいことを中心に進めさせます。勉強嫌いだった子でも自分のやりたいことは進めます。「教師は応援・支援する立場」と先ほど申しましたが、子どもたちに「すごいね」「いいね」「面白いね」など語り掛けることでも、子どもたちはすごく喜んでくれるので、「はなまる一つで最強の力を発揮すること」もありますよ!子どもたちがしたことを基本的に認めていくことで子どもたちは育っていくと思います。

記者:

子どもたちの自己肯定感が増していきますね。
本日は貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございました。

School Data

福岡県・福岡市立草ヶ江小学校
福岡県・福岡市立草ヶ江小学校
福岡県福岡市中央区草香江2丁目3-5
児童数:944名
学校長:池田 昌弘

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