「アイテム」トップ > 活用校の声 > 【アイテム通信 Vol.13】子ども主体の学校をめざして 後編

活用校の声

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算数主任の泉先生には、6年生の授業を拝見した後にお話をお伺いしました。授業は、まさしく子ども主体に進行していくものでした。そして、子どもたち自らが内発的に課題解決に向かう様子は素晴らしいものでした。教え込みからの脱却。それを実現する手立てとは。校長先生と泉先生のお話の中から多くのヒントが読み取れることかと思います。

Itemを授業で使う意味

泉先生、授業拝見させていただきましてありがとうございました。6年生では、どの授業も児童が司会進行役と板書をしているのですか?

泉先生(以下、敬称略)
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そうです。10月頃からやっています。それまでも司会を児童に委ねていたのですが、近頃は板書も委ねています。もちろん、少しずつ、徐々にです。いきなりは無理ですから。少しずつ委ねて行ったら結構できるのです。

本時の授業は、「柱状グラフを読みとろう」という課題の中で、Item算数6年生、122p「活用する力をつけよう」の問題をクラスみんなで取り組んでいましたね。

本校は、昨年度までItem算数を授業中で扱う時は「活用または発展的な問題」として使っていました。今日見ていただいた授業では、教科書では柱状グラフ1本1本を見ていくという作業がなかったので、そこを埋める問題としてItem算数、122pの問題を教科書の補充問題として扱いました。
今年も教科書を主体としながらも、Itemの問題を効果的に取り入れて授業を行っています。また、宿題としてもItemを使っています。

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ありがとうございます。Itemはどのような経緯で導入されたのでしょうか?

私は昔から筑波大学附属小学校の授業が好きでした。子どもたちからうまく考えを引き出していく。自分の求める授業が筑波大附属小にはありました。Itemは、その先生方が著者であったので信頼感がありました。また、教材の中身を見ると、活用の問題が単元ごとにあります。これから求められる学力に直結する内容だと感じました。

現行の教科書には、チャレンジ問題や活用的な問題もあります。しかし、自分自身、全国学力状況調査の問題に対応できる授業ができていないなという反省ともどかしさがありました。学んだ知識を他の事象に転移させて考えることは難しいものです。その点、Itemには様々に場面設定された問題があります。それを解くことで、子どもたちは他の場面や日常事象に学習内容を活用して考えていきやすくなっています。知識として身に付けたものが、適切に活用できるかどうかを問う問題が豊富にあるところが良いと思いました。校長先生に薦められて、Item算数を見たとき、自分が求めるところへ近づく最先端、最短ルートだと思いました。求められる授業が変わってきているのだから評価も変える。指導と評価は表裏一体です。その両方をItemはカバーしていると思います。

一方で、教師の意識が変わらないと使いこなすことは難しいとも感じます。教科書に加え、Itemも用いて授業を行うのですから。授業のねらいが何かを、教師が明確に掴んでおく必要があります。「この時間に何を考えさせるのか」を明確にするのです。単に問題を解くことが大切ではなく、どういう考え方を用いることができるようにするのか、これが大切だと思っています。指導者にそうした意識を持たせるツールとしてもItemは効果的です。結果として授業者のスキルも上がります。

学ぶ主体は子どもたち

昨今どの自治体も学校さんも「学力向上」「指導力アップ」は目標に上げられていますが…。

私は、本校4年目の在籍となります。小浜市には、子ども主体の学びを求める姿勢があります。子どもが主体的に学ぶことで表出する姿に、驚きを感じています。子どもの学ぶ姿を変えようと思ったら、学校全体で視点を変える必要があります。現在に至るまで紆余曲折もたくさんありましたが、教師が授業をうまく進めるだけでは到底たどり着かない、子どもの思考が表出する今の授業に惹かれています。

教師になって最初の頃は、子どもに教えて考えさせるという授業をしていました。教師主導の授業で、いかに教材にひきつけるかということに注力していました。約10年間そんな授業をやってきましたが、授業の中で輝けない子どもの姿がありました。ある研究会で子ども主体の授業を見た時、衝撃を受けました。子どもが生き生きと前面に出て学んでいるのです。この授業になんとかして近づきたいという思いが沸々と湧き上がりました。そこから考え方が変わりました。めざすところは同じでも、そこにたどり着く方法はいろいろあるのだと思います。

先生方は基本的に「子どもに教えてあげたい」という思いがありますから、授業を見守る、子どもの言葉を待つ、というのは難しいことですよね…。

授業の中で教師が教えても、子どもは分かっていないなと感じることがあります。教師は、教えたということに満足してしまい、子どもの学びに目が向いていないのです。

理解できていない子がいるな、というのはどこで判断するのですか?

自分の言葉で説明ができるかできないか、ですね。授業中に手が挙がらないということではなく、理由や説明を自分の言葉で表現できるかどうかです。どんなに教師が上手に教えても、授業内容を聞いていない子や、理解できていない子が出てしまう。やはり子ども自身が主体的に学ぶ姿勢にならない限り、解決はとても難しいのです。

子ども主体の学びと言えども、足りないところは教師が入って伝えます。でも、先頭に立ってやるのは子どもです。本校は児童集会もそうです。学校全体で環境を整えていくことは大事だと思います。

変化を求めることはパワーが要りますが、より良い子どもの輝きがあるなら求めるべきだろうと思っています。最初はうまくいかなくても、必ず変容してきます。少しずつ学校行事や児童集会のあり方が変わり、子どもの姿が変容してきています。教員の意識も変化してきていると感じます。

今年の研究課題「伝え、聞き、関わり合う、学びの進化」についてですが、ねらいは何ですか?

一言で言えば、子どもが自ら学びに向かうということです。教師は子どもどうしを横の糸でつないでいく。この単元では、本時では何を学ばせるのか。そのための教材研究です。既習事項と未知の事項を明確にし、ここではこれを学ばせると。その点が一番難しいのです。結論的には、何を教えるかではなくて、何を学ばせていくか、そこに尽きます。今日の授業は比較的うまく子どもたちの考えを引き出せましたが、子どもどうしの深まりが足りなければ、教師がフォローしなくてはいけません。

「教える」と「学ばせる」の間が難しいですよね。

はい。そこが明確にならないといけません。教師が必要のないところで出たり、出ないといけないところで出られなかったりします。その教師の出方はどうするとよいのか、私も日々実践しながら模索しています。

窪田校長

授業を考える上で、子どもの学習活動としては、「ひとり調べ」と「みんな調べ」があります。「ひとり調べ」はかなり主体的にできるようになってきていますが、「ひとり調べ」の発表だけで終わっていて、その先の追究が乏しいというのが本校の大きな課題です。  教材研究をするとき、「ひとり調べ」で完了する目標ではなく、子どもどうしの対話的な学び、ここをゴールに設定すべきだと思います。当然、そこには、「ひとり調べ」の発表をもとに問題を焦点化し、それを追究していく話し合い活動が仕組まれることになります。これがアクティブラーニングの肝だと思います。子どもの発表の中から、話し合いの方向をどう出していくかがポイントになります。具体的には、教師の出番であったり、話し合いのさせ方であったり。それらを、教材研究の段階でシミュレーションできる力こそが教師に必要だと思います。子どもからこんな考えが出てくるだろう、その先はどう追究させていくか、そこまでシミュレーションして考えられないと。

ただ、学びに向かうことが難しい子も中にはいますよね。

校長先生

そうです。だから、ユニバーサルデザインが大事になってきます。本校ではまだ取り組みを始めたばかりでこれからです。ただ、「授業のユニバーサルデザイン化」と言うとき、そこには「化」のベースになっている授業があります。ユニバーサルデザインの考え方や視点は積極的に取り入れながら、今本校がめざしている授業改善の本質的な部分にさらに磨きをかける中で、ユニバーサルデザイン化が進んでいくといいなと考えています。

いずれにしても、置いてけぼりになる子がいてはいけません。本校は人権教育を中核に据えているわけですが、であれば、授業はもちろん学校教育全体の中でその具現をどう保障していくかを常に考え、研究実践を積み上げていくことが大切だと肝に銘じています。

「なんでそうなるの?分からないな」が言える雰囲気のクラスでないと、ですね。

そうですね。その風土がクラスにないといけません。でも、中には、「分からない」という経験自体をあまりしていない子どももいます。算数が好きでよく勉強するので、分からないという経験が正直あまりないのです。でもItemは違う。簡単には分からない問題がありますから。今日の授業でも、つまりましたよね。立ち止まって色々考えて…最高だなと思って見ていました。さてどうするだろうと。

グラフに線を引いて説明した子がいましたよね。

校長先生

素晴らしい説明でしたね。

あの説明も、今までだったら教師がしていました。でも、子どもの中に説明できる子がいるのです。ほかの子も「分かった!」となる。それこそが子どもの力になると思います。いいなと感じる瞬間です。

校長先生

その姿が学び合いだし、ちゃんと相手のことを意識しているのです。結局、子どもの主体的な学び、対話的な学び、問題解決等々、教師はそれらを授業の中で学習過程としてどうデザインし、サポートしていくかだと思います。

授業の他にもうひとつ、家庭学習はどのように進めてらっしゃるんですか。

家庭学習は二本立てで行っています。習得と活用のページは、授業で扱わなかった問題を宿題として出し、全員に取り組ませています。探究の問題は、授業で扱うこともありますが、基本的には家庭での自主学習として位置づけています。自主的に探究の問題に取り組む子は結構います。特に、算数が好きな子は楽しんでやっています。

ところで、Itemの各ページの下部にあるドリルは、非常に効果的だと思っています。上部の単元の内容と一致していない問題が出ているのが良いです。普通のドリルは、すべて単元の内容に合致した問題になっています。Itemの場合は、単元の内容と計算ドリルの内容が異なっています。割合が出てきたり、分数が出てきたり、少数が出てきたり。そのため、子どもは、既習の内容を時間をあけて何回も復習することになります。だから、技能も習熟しやすい。そういうところで非常に上手に作ってあると思います。

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校長先生

指導と一緒で、Itemを使う際にも、子どもたちの主体性をどう喚起していくかということを工夫しないといけないですね。子どもに委ねるところがあっていいと思っています。ただ、最低限これだけは全員でやりましょうという部分は決めておいた方が良い。そうするとここは授業で使う、ここは家庭学習や宿題で出す…となりますよね。そこから後は子どもに委ねる。子どもに丸投げではなく、いろいろ仕掛けを作ってね。泉先生はちゃんと仕掛けを作って子どもにボールを投げているから、一生懸命頑張って取り組む子が増えてきているのだろうと思います。他の先生方も泉先生と同じように、切磋琢磨して頑張っていますよ。

本校は子どもも職員も全員で学んでいる感じです。授業を良くするために。

面白いと思っていただけるのが一番嬉しいんですね。お子さんたちがやらされている感じではなくて…。本日はいいお話をありがとうございました。

School Data

学校
〒917-0241
福井県小浜市遠敷72-17
学校長:窪田 光宏
児童数:174人
資料

パンフレット「アイテム算数のご案内」

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