2020年、新しい学習主導要領が実施されます。授業のあり方、学びの捉え方が変わる中で、学校や先生に求められるもの、目指す方向とは何でしょうか。item算数をご活用中の学校様2校にご訪問し、これからの時代に必要とされる学校、学力について伺いました。
聞き手 NPO次世代教育推進機構 齊藤 宏子
校長先生編
Q.「これからの学校・先生に求められること」をどう考えられていますか。
A校長先生
これからの時代の教育は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」が3本柱となり、学校、教師にはそれらの資質・能力の育成が求められます。現代の子どもたちは、スマートホンなど情報処理端末の普及で、思考力や判断力、コミュニケーション力を必要としない世界に触れる機会が増えています。ですから、ある意味真逆でもあるそれら資質・能力の育成を、短期間で一気に養うことは困難です。特に思考しながら、問題解決のために粘り強く向かう力は、年々積み重ねていくことで可能となるものと捉えています。
学校教育において、指導力に優れた教師が、よい授業、よい教育を実践しているだけでは、資質・能力の育成の実現は難しいのが実情です。学校として、共通性と一貫性のある取組を行うことはとても重要だと考えます。それはある意味で、教師の個性や特性を消してしまうことになるかもしれません。しかしこれからは、学校としてどのような資質・能力を育成するかを明確にするとともに、その育成のためにはどのような学び方が有効なのか。具体的な手だてを考え、実行していく必要があります。
本校では、実践を重ねてきた学び合いがベースにあります。試行錯誤し、子どもたちの実態に合った学び合い学習を通して、深い学びを可能にする基盤を先生方には作っていってほしいと考えます。子どもたちが主体的に、自ら学ぼうとする姿勢を作る授業。そのようにコーディネートする力が、これからは教師に求められます。児童の潜在能力を引き出す力も必要ですね。そのような教材としてアイテムは活用できるのではないか、と思っています。
B校長先生
私は、日頃より考えることを面倒くさがらず、自ら問いを持ち、自ら考える子どもを育てたいと考えています。子どもたちが算数に興味関心を持ち、自ら「どうして?」と疑問を持ち、「そういうことなんだ」と実感する、そのような取組の積み重ねを大切にしたいと考えます。
先生方には、子もたちに問いを持たせることができる教師であってほしいと思います。課題に対し、「できた」「解けた」で終わるのではなく、「ではこの場合にはどうなるの?」「こういうときは?」と、新たな問いを生むことができる力を育てる授業を仕組んでほしいと思います。知識や技能を身に付け、それをもっと広げたり深めたり、他のことに転用したりする力を子どもたちには身に付けてほしいと思います。そうすることで「生きる力」を育むことができると考えるからです。
アイテムの良いところは、まず活用問題が豊富にあるところです。そして、基礎・基本の問題から、段階を追って子どもたちに考えさせるような問題が計画的に盛り込まれているところです。つまり、問題量が豊富で、思考力を要する問題が組み込まれ、子に応じた指導が行いやすい教材であるところです。
活用・探究のステップには、子ども自ら解き方を考える問題が多数。
色を塗ったり線を引いたり、自分で考え学びに向かう力を養う題材に。
実際に授業、クラスを担当されている先生に聞きました。
Q.子どもたちにどのような学力を付けたいとお考えですか。
また、アイテムの活用法もお教えください。
C先生
アイテムは、単元学習が終わった段階で取り組むようにしています。初めの2ページ、「練習しよう」「確かな力をつけよう」は子どもが自力で解ける問題と捉えているので、家庭学習、自主学習のページとしています。終わった子にはまとめの「チェックしよう」も勧めています。その後の2ページ「活用する力をつけよう」「チャレンジしよう」の問題は主に授業で扱っています。単元内の学習、知識が身についた状態で、子どもたちに考えさせたい場面や、教科書の練習問題が終わってしまった児童に対して取り組ませています。子どもたちの中にも、学校で取り組む問題、自力で解ける問題がある程度理解されていますね。また、アイテムには教科書だけでは補えない問題が入っています。算数が得意な子は、チャレンジ問題が面白いようで、友達と話し合いながら学び合いながら、目を輝かせてやっています。
アイテムには自力では解けない問題があります。その事は子どもにも保護者の方にも理解していただくことが必要です。ですから活用問題は、宿題としては出さないようにしています。自力で解くことが難しい問題を宿題にしても、解けないのは当然だからです。自学自習の中でやるのはよいのですが。そして必ず、解いた過程を残してねと言っています。
ノートを使う場合でも、書き込む場合でも、必ず、解いた過程を残すように。
分らない問題のときは学校で質問すればいいんだよ、それでいいんだよ、と伝えています。わかった子に対していは、解けたから終わりではなく、聞きに来た子に分かるように話す、伝えることはとても大切なことだよと言っています。だから解けた子が偉いとか質問が恥ずかしいという雰囲気はクラスの中ではないです。その環境がないと「学び合い」は成立しません。
その意味でも学校全体で取り組む、継続していくことが有効的だと思っています。学び方、考え方は積み上げていくことで力がついていきます。それを6年間続けたら力の質が変わってきますよ。手をかけてあげたい子だけでなく、どんどん進める子にも良質の問題をきちんと与えるという意味もあります。あまり決めつけない、という点もポイントです。先生も子どもも、義務的にやらされているという思いが強いと続きません。そのバランスが難しいのですが。自力で解くことが難しいと思われる問題は、分からなかったら友達や先生に聞くことができる環境でやるようにしています。わかった!できた!があるから学ぶことが好き、考えることは楽しい、につながるのだと思います。
教科書とアイテムは単元配列が異なります。慣れも必要ですが、目次で単元名を見れば子どもは大抵わかります。低学年は厳しいので、黒板に「アイテムでは○ページ」と書きますね。でも大きな問題ではないです。下にある計算ドリルは、ドリルノートを使い完全に自学自習用にしています。
D先生
アイテムは年間1冊。計算ドリル、単元の導入、基礎・基本問題、活用・発展問題まで入っていて、「この問題ではこの力をつけさせたい」という意図が明確。すごい教材だなというのが第一印象です。本校で学力調査を実施した際に「無回答」が多い問題というのは、教科書やドリルでは問われたことがない形式の問いであることが多かったのです。式ではなく「図や表で書きましょう」のような問われ方をすると答えられない。そのような課題の解決策にアイテムはなると感じました。いろいろな考え方に触れて、それを受け入れられる姿勢を身につけることが、学びに向かう力、挑戦する力に繋がるのではと思いました。算数に関わらず、そのような心を持った子どもに育ってほしいという願いがあります。
習得のページは反復練習、定着問題として全員で取り組む問題としています。本校では、全学年の算数の時数を活用問題等に取り組み時間として、標準時数より10時間多く設定したり、授業と授業の間に学習強化タイム(帯タイム)を設けています。「こういう問題もあるからやってみよう」と教師も子どもも少し頑張って、活用問題にチャレンジしている感じはあります。考え方や意見の発表だけでなく、練り上げまで出来ている気がします。
決まった方面からだけでなく多方面から見る力は社会に出たとき必要となります。またいろいろな考え方を受け入れ自分に取り込むこと。何もないところから、みんなで協力をして新しいものを作り上げていく力を付けてほしいという願いがあります。アイテムの問題は、ひとつの考え方だけでなく、違った考え方ができる、共有できることの豊さを知るヒントになると思います。最初はもちろん教師が導く必要があると思いますが、いずれは子どもたち自身がコーディネートできるところまで行ってほしいですね。そのような授業を算数でも実現したいです。
1年生から継続して使うと、子どもたちの中ではアイテムが当たり前のものとなっていきます。積み上げ効果はありますから、同じ教材を全校で活用することに意味はあると思います。教師はどうしても理解が難しい子に手を掛けてしまうのですが、算数が好きな、得意な子の力を伸ばしてあげることも大事です。その意味でアイテムが役に立っていると思います。算数が少し苦手であっても、考える問題に当って挑戦してみることは必要だと思っています。