学力向上CO・研修主任をされている関口明宏先生からは、現場での具体的な取り組みについてお話を伺いました。
主体的な学びへと子どもを導くために
日本教育新聞:
関口先生は今年度学力向上CO・研修主任をされていますが、実際、子どもたちにはどの様な力をつけたいとお考えですか。
関口先生:
学校長からお話しがあったように、今年度は「主体的に学ぶ児童の育成」をテーマに研修に取り組んでいます。「主体的」というのは、子どもたちが自分で考え、勉強に取り組んでいくことです。まず、どうしたら子どもが主体的に学べるかということを考えました。具体的には、「子どもたち自身に学習の目当てをしっかり持たせよう」ということで今年度は頑張っています。そのため授業の導入のところでは、例えば問題が出てきた時、問題からどんなことが分かるのか、どんなことを聞かれているのか。そのようなことを細かく確認し、既習事項と新しく学ぶことの違いを見つけることで、今日(本時)はこのことについて勉強していこう、ということを、子どもたちと先生の対話の中から見つけていく。子どもたちが「今日はこれを頑張るんだ」という気持ちを持つことができれば、主体的に学習に取り組めるだろうと考え、その点に力を入れています。
子どもたちから目当てを引き出していくような、対話的な授業を目指されていると。
そうですね。
研修テーマとアイテムには何か繋がりがありますか?
アイテムは基礎基本の問題から活用、探究の問題と構成されていて、見開きでレベルが分かるようになっています。アイテムの中から自分の力に合った問題を見つけ、自分から取り組んでいけるというところが、とてもいいと思っています。子どもたちには、1冊全部終わらせることを目標とさせていません。自分の力に合った問題を解いていく、その点を目標としていますし、そういう位置づけで使っています。
アイテムを通して子どもたちに身に付けてほしい力としては、思考したり、判断したり、表現したりする力です。本校の子どもたちの苦手な部分ですので、克服していきたいと思っています。
基礎基本の問題は、比較的普段のテストに出るような問題なので、基礎的な確認ができます。活用問題は、学力テストや全国学力・学習状況調査だといった問題に対応でき得る問題ですよね。算数好きな子は、活用や探究の問題を楽しく解いているように思います。この辺は本当に子どもたちのレベルに合った問題が用意されているってところが、とてもいいところかなと思います。
長く使うことでわかったi・tem算数の良さ
日本教育新聞:
お昼のドリルタイム以外でもアイテムは使われていますか?
関口先生:
学力向上委員会は、それぞれの学年、先生がたのアイテムの使い方は確認しています。算数がそれ程好きではない子にとって、アイテムが重たく映るのも事実です。そういう子が嫌にならないように、個々に応じて進めてもらうように先生がたにはしてもらっています。その子の習熟に合った問題をやるという意味では、ドリルタイムがとても有効ですね。
ドリルタイム以外では、それぞれの先生が工夫しながら活用しています。
授業中、教科書の問題が早く終わってしまった子に対して、または教科書の問題では足りないとき「アイテムをやろう」と使います。ドリルタイムや授業で終わらなかった部分は、夏休み等の課題にすることもあります。しかしその場合でも、終わらなかったところを全部やろう、ではありません。基礎基本問題のページは全部やってこようね。活用問題以降の部分は、チャレンジできる子はやってこよう、と言って私は出しています。
学力向上委員会の会議で話し合って、こんな場面でこのように使ってみましょうと提案することもあります。しかし現場で各学年、先生がたが使ってみて、やりやすい方法を見つけて進めてもらっていますね。先生がたのオリジナリティーもいい具合に出てきているのかなと思います。
ほぼ書き込み式で進めていますが、アイテムの下に付いている計算ドリルは、アイテムノートを別に用意してノートに書かせています。アイテム以外に市販のドリルも使っているので、演習量は多いと思います。その結果が、学力テストや全国学力学習状況調査にも反映されているのだと思います。
御校では継続的にアイテムを使用されていますが、先生はその点についてどのようにお感じになっていますか。
私は本校6年目ですが、異動して来たときには(アイテムを)もう使っていました。そこでアイテムを始めて知りましたが、「難度の高い問題がたくさん載っている教材だな…」というのが初めて見た時の正直な印象です。
ただ、子どもたちは毎年アイテムを目にしているので、難しい問題に当たったときにも、そんなに抵抗感がないのだと思いました。
子どもたちの中には、いきなり学力テストや全国学力学習状況調査の問題を見たら、「うわぁ~」と圧倒されてしまう子も多いと思います。でも、アイテムの活用、発展問題を日ごろから見ているとそのような事は起きません。そこはすごいと思いました。
アイテムに代わるいい教材があるかな?と先生がたと話をしたこともありますが、いまだ見つからないので長くアイテムを使っています。
前任校ではアイテムを使っていなかったので、最初は、計算ドリルにプラスしてこれ(アイテム)使っているの?!と驚きました。正直、いつ、どのように使うのだろうと思いました。でも、長年本校で使っている教材だったので、子どもたちが想像以上に抵抗なく取り組んでいて、「すごいなぁ…」と感心しました。1年目は、ただやらせて、終わらせることに必死でした。終わった子には「すごいよ。頑張ったね」なんて言っていました。アイテムに慣れて、自分のものとして捉えられるようになったのは、3年目くらいでしょうか。その頃にちょうど研修主任になり、算数の学力向上のため、アイテムをもっと効果的に活用するにはどうしたらよいかを真剣に考えるようになりました。
例えば、授業の中でアイテムの問題を取り上げて、「今日はみんなで難しい問題にチャレンジしてみようか」と使ったこともあります。グループ(班)をつくって教え合いや学び合いをさせると、子どもたちは先生に教わるより生き生きしているように感じますね。
教科書の単元の最後に練習問題として「力だめし」があるのですが、それが終わったらアイテムの問題をやることもあります。その他に、学力テストの前にアイテムのチャレンジ問題にみんなで取り組んだりもします。
今年は連休や祝日が多かったせいか、なかなかドリルタイム以外、アイテムの時間を十分に取れなかったと、反省しています。しかしその中でも、自分からどんどん進めて頑張っている子もいますから…。
これからもアイテムの可能性を探っていきたいと思っています。
最後に、関口先生のこれからの展望をお聞かせください。
例えば全国学力・学習状況調査が解けるような学力を子どもたちに付けないといけないと考えると、教科書だけを扱った授業は、もしかしたら足りないのかもしれないなと思います。加えて今はいろんな情報があります。多くの情報の中から、必要な情報を集めてくる力が必要とされるのかなと実感しています。もっと深く考えたり、考えたことを表現したりという場面を増やす授業改善をしていきたい、していかなくちゃいけないよね、という話を先生がたとすることがあります。
アイテムの探究問題を授業で広げ、みんなで考えていき、子どもたちから少しずつ意見を聞いて、それを基にみんなで表現していけるような。そういう授業が展開出来たら、今、国が求めているような算数の力が付くのかなと思いますね。ただそれは、教師側の授業の進め方にも課題があるのかもしれない。国が求めている学力のレベルへいかにして授業で近づけていくか、そこは難しい課題だなと思っています。アイテムの問題を使えばいいのか、それとも教科書の問題を使ってできるのか。そこは常に悩んでいるところです。答えは出ていないのですが。ただ、それを考えるきっかけにアイテムはなるのかもしれません。
学びを深めていく題材には、向いていると思います。
本日はありがとうございました。
School Data
群馬県みどり市大間々町大間々884番地
児童数:154名
学校長:鎮西 宏子