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日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材2020
日本教育新聞企画特集取材記事(2020年1月13日付)と併せてお読みください。

活用する力をつけてあげたい

日本教育新聞:

早速ですが松本校長先生に伺います。御校で取り組まれている学力向上についての施策についてお話しいただけますか。

学校長:松本先生

学校長:松本先生

松本校長:

本校では情報教育をメインに学力向上に取り組んでいます。新学習指導要領ではすべての学習の基盤として位置付けられていますが、小学校では教科として情報教育がある訳ではないので、すべての教科において情報活用能力を育成するという視点で、教科固有の知識・理解や思考・判断・表現のみならず情報活用能力という汎用的な力を伸ばす取り組みをしています。その中で算数科においては、知識・技能をしっかりと定着させた上で活用させ、それぞれ身に付けた知識を関連付けられるような学びをさせて行きたいと考えています。そこで一つのツールとして『i・tem算数』を提案しました。

松本校長先生は『i・tem算数』をどこでお知りになられたのでしょうか。

松本校長:

当校に赴任する前に少し現場を離れていて、文部科学省に4年間席を置いておりました。その時だったと思います『i・tem算数』の存在を知ったのは。教材の中身を拝見し、「これはいいなぁ、現場に戻ったら使いたいなぁ」と思っていました(笑)。

松本校長先生がこの学校で大切になさっていることは何ですか。

松本校長:

私たちの現場は人と人の繋がりですので、信頼関係づくりですね。教員が子どもたちに寄り添い育てることと、先輩教員が後輩を導き育てることも、大人でも子どもでも人が人を育てるという意味においてあまり大差がないのではないかと考えています。子どもたちにも教員にも個性があってそれをどう伸ばして輝かせるかを考えています。これは私と教員の関係性のみならず、担任と子どもたちの信頼関係も言うまでもありません。

この学校に赴任された時、子どもたちの様子はどうお感じになりましたか。

松本校長:

学力的にはずば抜けて高いという印象はありませんでしたが、真面目に学習に取り組む子は多いと感じました。それは計算をする過程にも垣間見え、例えば12÷5をノートに書き、筆算にして計算している子が目立ちました。筆算は計算を正確にする上では、確かに大事なのですが、計算の工夫ができる問題でも筆算をしようとしている姿から、「本当の意味での計算力が身についていないのではないか」と感じました。計算力は、数の構成の理解や、交換、分配、結合の工夫、概算、単位換算などを教え、学び取らせる中で身につくのだと思います。単にドリルだけ、計算しているだけでは本当の計算力は、決して身につかない力だと思います。

つまり、活用していく力が不足しているのではないかとお感じになられたのですね 。

松本校長:

これは冒頭で申し上げていたことにもつながりますが、沢山の知識は持っていても、それらをつなぎ合わせて活用して行く力が不足しているのだと感じました。全国学力状況調査にもあるような、個々の知識をつなぎ合わせて考えて行く、正に活用する力をつけてあげたいと思いました。教科書で習ったフォーマットでの回答は導き出せても、問題文や表など、ひとたび状況が変わってしまうと対応が難しくなってしまう。基礎や基本は大事で教科書を通じてしっかりと学ばなければなりませんが、初見の文書を読む、見慣れない問題を考えることは、教科書に合わせた教材やドリルだけでは限界があります。同時に多忙を極める先生方にそれぞれの単元で、多様な教材を用意してもらうということも現実的ではないです。私が初めて『i・tem算数』を見た時に感じたのは、【問題が精選されている】、【数学的な見方や考え方に基づいて構成されている】「流石だな!」と思ったことを記憶しています。私は算数が専門という訳ではないのですが、それでも「これはすごい!!」と思いましたね。

なるほど、活用力の不足を補うために『i・tem算数』と考え、先生方に話されたのですね 。

松本校長:

いえ、それだけではないのです。『i・tem算数』は、子どもたちに推奨出来る教材の一つだと思います。この教材を使うことは、子どもたちの学力向上を目指すだけでなく、教師側も学べると私は考えています。教員ですら見落としがちな視点で問題が配置されていたり、別の方向から考えられるように問題にスポットライトを当てていたりと、私たちが見てもワクワクすることがあって、教員の教材研究には持って来いだと思います。

なるほど。様々な効果を狙っての『i・tem算数』採択であった訳ですね。松本校長先生、お話しいただき、ありがとうございました。

『i・tem算数』は授業改善でより生かせる

日本教育新聞:

次に現場で指導されている先生方にお伺いします。まず、算数主任の小川先生に御校での算数の学力向上に向けた取り組みについてお聞きします。

小川教諭:

授業の中では、教え込みからの脱却、子どもたち同士の学び合い、教え合いによる思考力、表現力を生かして問題解決して行くことを目指しています。思考するために必要なツールとして数直線やテープ図などを活用して、低学年から身に着けられるように指導しています。また、本校では筑波大学附属小学校での授業スタイルを参考にして、子どもたちにむけた発問の仕方や教材、教具なども工夫して新指導要領に対応した授業改善を目指しています。松本校長先生の指導の元、新しい指導要領に対応した授業づくりで「見方、考え方を広げる」子どもたちが主役になることを意識しています。もちろん、基礎基本も大切ですので、自作の100問計算などを5分以内で解けるよう毎日実施しております。

基礎基本の計算力は自学で行っているのですね。

小川教諭:

計算力をつけるには、ある程度量をこなすことが必要です。一方で思考力などを高めるためには、質の部分が必要になってきます。その点『i・tem算数』は子どもたちが考え、解く喜びが得られるような問題がたくさん掲載されていて、しかもそれらがしっかりと整理され、系統だった作りになっているところが魅力的です。低学年からのつながりが、確実に高学年へと結びつているところも良い点だと思います。

『i・tem算数』はどの部分をどんな時間に学習しているのですか。

小川教諭:

算数の授業中でも使いますが、主な活用場面はスキルタイムになります。月水金の「算数きらりタイム」です。低学年では、教員側で問題やページを指示して与えることが多いです。

松元教諭:

高学年も指示することはありますが、子どもたちが選択しています。やはり「算数きらりタイム」で使うことが多いですが、算数の時間で早く終わった子には、『i・tem算数』に取り組む子もいます。個人差がありますので、その子の学力に応じて「習得」や「活用」、「探求」に進める子は、進んでも良いとしています。

『i・tem算数』を初めて2年目ですが、子どもたちの変容などお気づきの点をお聞かせください。

小川教諭:

子どもたちより先にむしろ教員の変容ですかね。初めにお話ししましたが、教員が授業改善を行って行く過程において、子どもたちが思考し、表現して、問題解決を行えるように授業のあり方を変える、という教員の意識の改革が大きいと思います。従来の授業のあり方では『i・tem算数』を上手く使って行くことは、難しいのではないかと思います。授業改善を行っていくことが出来ているからこそ、子どもたちが『i・tem算数』に取組んだ時に、授業中に考えたプロセス、思考や表現の仕方が徐々に身につき、活用の問題などに向き合う姿勢でも粘り強さなどが役立って、「考えることが楽しい!」と感じられるようになって来ているのではないかと思います。

教員の変容が先で子どもが続くのですね。

小川教諭:

そうですね、『i・tem算数』自体を授業の中で取り上げることはそう多くはないと思いますが、授業と上手く連携が取れているように感じます。子どもたちが『i・tem算数』に取り組むようになってから、活用などの問題にも躊躇しなくなってきて、「やってみよう!」「解けると楽しい!」などの声や「友達と一緒に考えるのが面白い」といった声が聞かれるようになりました。

松元教諭:

高学年になると多様な考え方が出て来ます。一つの問題に取り組むにもさまざま角度から考えてみたりしています。速さの問題や面積、体積の求め方など、教科書に載っている考え方だけでなく、思考の転換をしてみたり、友達の面白い発想に考え方を深めたりしています。考えることに慣れてくると自然と粘り強くなってきます。それは感じます。

考えることに慣れると粘り強くなる、なるほど。授業改善に『i・tem算数』が上手く使えているのですか。

小川教諭:

まず、筑波大学附属小学校の授業が素晴らしいです。『i・tem算数』が本校での授業改善にあっているというより、筑波大学附属小学校での授業を本校の授業改善のポイントとしていて、そこで重要だとされていることが、『i・tem算数』には多く取り上げられているので、とても使いやすいです。例えば、問題文から読み解いて図に書きましょうとか…。

『i・tem算数』は量、質ともにドリル教材を上回りますが、保護者の理解は得られているのでしょうか。

松元教諭:

保護者の方は非常に協力的で、理解は得られていると思います。確かに『i・tem算数』は量も多いのですが、「スキルタイム」や日々の宿題だけでなく、長期休みの間などでも学習出来るので、保護者の目にも触れ、丸付けなどもしていただけて、学校での取り組みが理解されるようになって来たと思います。地域特性もあるかも知れませんが、保護者の方にはご理解いただき取り組みやすい環境ではあります。

根本教諭:

ごく一部では教材の使い残しについての質問があるように聞いております。使用2年目に入って家庭での理解も深まりつつあり、学校と家庭の連携を取らせていただきながら進めております。

『i・tem算数』導入の経緯についてお聞かせください。

根本教諭:

一昨年6年の担任をしていた時に、千葉県独自の「学びの突破口ガイド」を使ってみたりしながら、当時の学力調査B問題や思考力が身につくような問題を解けるように子どもたちをしてあげたいと考えていたところ、『i・tem算数』の存在を思い出したのです。以前から教材の存在自体は知っていましたが、本校の松本校長先生からも「色々と教材を見た中で『i・tem算数』が一番思考力を高められるのではないだろうか」と紹介がありました。赴任された1年目の全国学力調査の結果をみて、1学期に使っていた計算ドリルを直ぐに見直し、2学期に向けて夏休みを跨いで教員間でも話し合い、2学期から計算ドリルに替えて採用することにしました。

年度途中で教材を変更されたのですか。松本校長先生の決断力、行動力の速さはすごいですね。つまり校長のご紹介で『i・tem算数』が採択されたのですね。

小川教諭:

もちろん松本校長先生のご紹介もありましたが、押しつけなどではなく、全国学力調査で出題されている問題や子どもたちの結果などをしっかりと分析して、いま子どもたちが身につけるべき力とは何かを教員間で話し合い、授業改善を実施して『i・tem算数』にたどり着いたのです。教科書を使っても子どもたちの思考は深められると思います。ただ本校では単元の最後に、この単元で学んできたことを生かして挑戦する課題として、教科書より少し高いレベルでの問題に取り組ませています。そうすることで、身についた知識を生かす場が子どもたちに与えられ、学ぶことが楽しいと思えるのだと思います。しかし、これまでは単元ごとに少し高いハードルの問題を探すことが大変でした。『i・tem算数』には、単に難しい問題というだけではなく、これまでの知識や経験をもとにして解き進められる問題が幾つも用意されているので、すごく助かっています。

松元教諭:

色々な単元で問題を探しあてるのもそうですが、今まではプリントを大量に印刷していたので準備に時間が掛かってしまっていました。現在進められている働き方改革の面から見ても時間短縮につながっています。一冊の中に凝縮されていて、使いやすいというのも採択理由の一つです。

授業改善を行われるなかで『i・tem算数』を採択されて学力向上に効果があったと実感されていますか。

小川教諭:

子どもたちの学力向上に効果があったと思われる最大の要因は、教員の意識が変わって、授業改善がなされたことが一番大きなものであったと思います。「算数きらりタイム」での『i・tem算数』や「国語きらりタイム」での「論理エンジン」も、教材そのものが持つ力もありますが、それは道具でその道具を上手く使えるようになるためには、教員側の意識、つまり授業スタイルが変わらなくてはなりません。やはりメインは授業改善なのです。

根本教諭:

この4月に行われた全国学力状況調査で本校は、千葉県内の平均を算数も国語も大きく上回っていました。小川先生も言ってますが、教材の見直しをはじめとして、本校教員の取り組みなど、色々なものが作用して相乗効果で子どもたちの学力向上につながっているのではないかと思います。

授業改善というお話が出てますが、具体的にどのように進められているのですか。また、参考にされている文献などはありますか。

小川教諭:

参考にしているのは「算数授業研究」という冊子です。内容も最新のものですし、分かりやすいです。実際に筑波大学附属小学校授業研究会にも参加して、生の授業を見せていただいたりして参考にしています。私が参考にしているのは、すごく「子どもを大切にしている授業スタイル」だということです。算数の授業スキルもありますが、子どもに寄り添う授業スタイルが算数から派生し、他教科にもつながり、更に学級経営にもつながって行くのだということがよく分かります。考えさせる子どもを育てる、発問の仕方を考えさせる、互いに学びあいの姿勢を育ませるなど。筑波大学附属小学校での先生方の授業は、深い知識に裏付けされていて、高度なテクニックではあるのですが、分かりやすくてマネしやすいのが良いと思います。「筑波の授業スタイルは筑波小に通う子どもだから出来る」という先生もいらっしゃいますが、そんなことは決してないですね。そんなスタイルをまねて授業改善を行っています。

『i・tem算数』を使いたいけど、採択に踏み切れない学校も多くあるのですが、どのような点が障害になるとお考えですか。

根本教諭:

一概には言えませんが、やはりトップ(学校長)の決断は大事ですよね。校長先生が学校として進むべき方向性や学力向上への指針を示していただけるだけでも、教員の意識は変わると思います。上から押し付けただけでは反発もあり難しいでしょうが、校長先生がどれだけ真剣に子どもたちの学力をつけてあげたいか、その熱意が先生方に伝わればそれほど(教材変更の)障害にはならないのではないでしょうか。現場にいる先生だって、子どもたちの学力向上は常に意識していますからね。

本日は、松本校長先生、根本教務主任、小川算数主任、松元研修主任に印西市立原山小学校での算数の実践的な取組や貴重なお話の数々をお伺い致しました。取材にご協力いただきまして、本当にありがとうございました。御校での取り組みが、子どもたちの学びに向かう力をより良い方向へ導くであろう事を祈念しております。

School Data

印西市立原山小学校
印西市立原山小学校
学校の沿革
平成元年4月1日 開校 
印西町立内野小学校より分離

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